日本人は大のお風呂好き。しかし、正しい入浴法を誰かから教わる機会はなかなかありません。そこで温泉・お風呂の医学研究者である早坂信哉氏に、現代人が知っておきたい入浴法について語っていただきました。
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夜あまり眠れないと翌日、集中力を欠いたり、怒りっぽくなったり。年齢を重ねると眠りが浅くなり、「できれば毎日ぐっすり眠りたい」という方も多いのではないでしょうか。
しかし、日中の活動不足やついつい夜遅くにテレビやスマホを観るなど、日常の何気ない習慣が慢性的な不眠に陥りやすくしています。
不眠が長引くと、肥満を引き起こし、やがて生活習慣病や認知症の引き金になることが最新の研究で明らかとなっていますので、放置せずに改善していきたいものです。
もちろん、入浴も睡眠の質に大きく影響します。今回は温泉療法専門医の見地から、不眠を解消する入浴のコツについてお話していきます。
■不眠症は入浴で早めのセルフケアを
長年、医療に携わっていますが、今、不眠症の人が本当に増えています。
ベッドの中でスマホを延々と眺めていたり、寝る直前にメールを見たりすることで脳が興奮し、交感神経が高ぶってしまい、眠れなくなることが多いようです。
眠れないからとお酒を飲む方もいるでしょうが、お酒は睡眠の質にとってはよくありませんし、癖になるとアルコール依存症になってしまいます。
睡眠薬も使わずに済むならそれにこしたことはないでしょう。睡眠は毎日のことですから、セルフケアとして副作用もないお風呂をおすすめします。
お風呂は一人の時間。
いろいろと悩みがあったり、葛藤があって頭の中でいつまでもぐるぐる考え込んでしまい眠れないという方は、あえてゆっくりとお風呂の時間を取って、一人裸でリラックスする時間にしてみましょう。
お風呂で湯につかれば、溢れる情報を整理する場にすることもできます。
■不眠症には40℃で20分がベター!
お風呂にゆっくり入ると体は温まります。人間は体温が下がっていくときに眠くなるようにできています。雪山などで体が冷えたときに眠くなるのはその象徴的な例です。
ですから、寝る1~2時間前に40℃で15~20分お風呂に入って、一旦体を温めることで、ちょうど寝る時間に下がっていき、すんなり眠ることができます。
額にぐっしょり汗をかくような場合は、入浴時間はもう少し短くてもOKです。
脳が興奮して眠れないタイプの方はぬるめの湯にゆっくり入り、副交感神経を優位にすることで脳を鎮めれば、寝付きやすくなるでしょう。
夜遅く帰ってきた時や体調が優れない、忙しくてどうしてもお風呂に入るのが億劫という場合は、シャワーよりも“手浴”という方法もあります。
洗面器に42℃のお湯を入れ、手を浸けて温めるだけ。全身に温まった血液が流れ、体温が上昇します。寒い夜にもおすすめです。
充実した日々には良質な睡眠が不可欠です。年齢とともに睡眠の質が下がっていたら、日々の生活を見直してみる必要があります。
不眠対策の入浴法について、詳しくは著書『たった1℃が体を変えるほんとうに健康になる入浴法』(KADOKAWA)をご覧ください。
監修・構成/早坂信哉
取材・文/庄司真紀
指導/早坂信哉(はやさかしんや)
1993年、自治医科大学医学部卒業後、地域医療に従事。2002年、自治医科大学大学院医学研究科修了後、浜松医科大学准教授、大東文化大学教授などを経て、現在、東京都市大学人間科学部教授。一般財団法人日本健康開発財団温泉医科学研究所所長。博士(医学)、温泉療法専門医。
『たった1℃が体を変えるほんとうに健康になる入浴法』 早坂信哉 著
(KADOKAWA)