文/印南敦史
「実は甘党だが、糖分はダイエットの敵だからスイーツは我慢しなければならない」
「とはいえ甘いものをやめられないから、結局はやせられない」
そんな堂々巡り状態に陥り、悩み続けているという方もいらっしゃるはずだ。しかし、ダイエット外来医師である『午後3時に食べるだけダイエット やせるスイーツ』(工藤孝文 著、秀和システム)の著者は、そうした考えこそが、ダイエットがうまくいかない原因なのだと指摘する。
食べたいものを我慢するダイエットは長続きせず、それどころかストレスにもなってしまうため、それが挫折につながる。だが、本書を通じて著者が提唱している「午後3時に食べるだけダイエット」を実践すれば、そんな悩みも解決できるというのである。
大切なポイントは、次の3つ。
(1)自分の心に素直に向き合い、ストレスを感じている自分に気づく
(2)自分の好きなことは何か、その特性を知る
(3)午後3時のスイーツで心を満たし、脳内を幸せホルモン「セロトニン」で満たす!
(本書41ページより)
なお、「午後3時に食べるだけダイエット」には、スイーツの食べ方に関する3つのルールがあるという。ただしそれは「〜しなければならない」という制約のようなものではなく、“無理せずダイエットを続けていくためのコツ”だ。
【ルール1 】午後3時にスイーツを食べる
人間の体に「体内時計」の機能が備わっているのはご存知のとおり。朝に起き、また次の日の朝に起きるまで、体が規則正しくスムーズに働いてくれるように、1日周期でリズムを刻んでいるわけである。そして、そのなかでも重要な意味があるのが午後3時ごろだそう。
1日の中で見ると、午後3時ごろが、もっとも脂肪がつきにくい=太りにくい時間帯だということが科学的にわかっています。スイーツを食べるなら午後3時がベスト! それによって夕食までに血糖値が安定し、食への衝動が爆発しないので、食事の量も自然に減っていきます。(本書52〜53ページより)
【ルール2 】コーヒーといっしょにスイーツを食べる
コーヒーには「クロロゲン酸」というポリフェノールが含まれ、血糖値を上げにくくする作用があります。そのため、脂肪としてためにくくなるダイエット効果と、抗酸化作用によるアンチエイジングの2つの効果があります。(本書53ページより)
つまりスイーツとコーヒーは、やせ効果抜群の食べ合わせだということだ。
【ルール3】 楽しみながらスイーツを味わう
本来、食べることは楽しく、幸せなことであるはず。にもかかわらず「食べてしまった……」というような自己否定や罪悪感、自己嫌悪などを持ちながら食べるのはもったいない。楽しさを否定してしまったのでは、おいしさもまた半減してしまうだろう。
そこで著者は、シンプルかつ本質的なことを訴えている。スイーツを食べるときは、脳と心でじっくり味わいながら食べるべきだということだ。いいかえれば、五感を通して彩りや香り、甘味のなかにある塩味(えんみ)などを堪能するのである。
そうすれば必然的に、ドカ食いでは味わえない喜びが得られることになる。その喜びこそが、幸せホルモン「セロトニン」が分泌されている証なのだ。
やせるスイーツの食べ方 Q&A
Q1 忙しいので午後3時なんてムリです。
たしかに、こういう反論もあるかもしれない。だが著者は、「忙しい」は自分への言い訳かもしれないという。本当にやせたいのであれば、午後2〜4時の間で調整はできるはずだと。
時間をコントロールできれば、食欲もコントロールできるようになるだろう。そこで最初から無理だと決めつけず、午後3時を目指して1日のスケジュールを調整してみる価値はあるのではないだろうか?
Q2 コーヒーは苦手です。緑茶でもいいですか?
緑茶でもOK。緑茶に含まれるカテキンのなかの「ガレート型カテキン」には、体脂肪を減らす効果+血糖値スパイク(血糖値の乱高下)を防ぐ効果があるというのである。
Q3 コーヒーにミルクと砂糖を入れてもOK?
ブラックが苦手の場合は砂糖を入れてもいいとはいうものの、クロロゲン酸の吸収率が低下してしまうため、できればブラックが理想的であるようだ。
* * *
「スイーツを食べてダイエット」とだけ聞けば、「そんなことが本当に可能なのか」と感じるかもしれない。が、ストレスから逃れ、幸せを感じながら体をコントロールするということであれば納得できるはず。少なくとも本書を参考にしながら、「午後3時のスイーツ」を試してみる価値はありそうだ。
文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)などがある。新刊は『「書くのが苦手」な人のための文章術』( PHP研究所)。2020年6月、「日本一ネット」から「書評執筆数日本一」と認定される。