文/印南敦史
ご存知のとおり、免疫とは私たち人間に備わっている“体を守るための防衛システム”である。
『ウイルスに負けない! 免疫力を上げる最強の方法』(白澤卓二 著、ぱる出版)の著者によれば、それはさまざまなウイルスに対抗しうるものであり、その状態によって病原菌が体内に侵入したときの反応が違ってくるのだそうだ。
免疫力は人生を左右します。免疫力がうまく働けば、病気に悩まされることなく、気力、体力ともに充実して仕事やプライベートも、すべてうまくいきます。
逆に、免疫力が低下してしまうと、病気にかかりやすく何かしらの体調不良を抱えることになり、仕事の効率がダウンしてしまうでしょう。(本書「はじめに」より)
ちなみに、医療用語に「免疫力」ということばはないのだという。免疫は多くの免疫細胞が関わった複雑なシステムで、ひとことでくくれるものではないからである。しかし、「免疫力」「免疫力を上げる」などのことばがもはや定着しているのも事実なので、それをあえて否定する必要はないという考えが著者にはあるようだ。
ただ、それには「免疫力をバランスよく働かせる」という意味が入っています。
大事なのは、「免疫は複雑な仕組みで成り立っていて、それがバランスよく機能していること」ということをたくさんの人に知っていただき、そのためにどうすればいいのかをわかりやすくお伝えしたい、そんな思いが本書のスタートです。(本書「はじめに」より)
つまり本書では、免疫力の仕組みやメリット、果ては生活習慣のポイントまでがわかりやすく解説されているわけである。
今回は「食」に焦点を当てたChapter 5「ひとつでも多く実戦しよう 免疫力を高める食べ物・食べ方」内の「免疫力を活性化する食べ物」を取り上げてみよう。
糖質と脂質のとり方に気をつければ高血糖や炎症を避けることはできるが、他にも免疫力アップに役立つ食べ物があるというのだ。
たとえば大切なのが、肉をバランスよくしっかり食べること。肉は質のよいタンパク質を多く含んでいるからだ。
タンパク質は英語でプロテイン(protein)というが、語源はギリシャ語の「第一に摂るべきもの」という意味からきているのだそうだ。そんなところからもわかるように、筋肉や血液、骨、内臓、皮膚、ホルモン、神経伝達物質など、人間が生きていくために必要な細胞の原料となるわけだ。また免疫細胞の原料でもあるので、不足すると免疫力が低下する。
質のよいタンパク質には、肉や魚、卵の動物性タンパク質と大豆製品の植物性タンパク質があります。アミノ酸のバランスはどちらも理想的なのですが、体内での吸収率が異なります。大豆はヘルシーではあるのですが、90%以上が体内で利用される動物性タンパク質に比べると、体内での吸収率がやや低めです。効率よくタンパク質をとりたい場合は、肉や魚、卵がおすすめです。(本書173ページより)
身近な肉といえば牛肉、豚肉、鶏肉ということになるが、当然ながらどれにも魅力があるもの。つまり、バランスよく食べることが大切なのだ。
牛肉は脂身が少ない赤身肉を
牛肉といえば、広く流通しているのは穀類を食べて育った、オメガ6系脂肪酸が多い牛肉。しかし(価格は高いものの)、牧草を食べて育った牧草牛(オメガ3系脂肪酸が豊富)がいいのだという。
一般的に、牛肉はオメガ6脂肪酸が多く、肥満、高脂血症、動脈硬化などの危険因子につながるので、過剰に食べないようにと言われています。
ところが、牧草を食べて育った牧草牛はオメガ3脂肪酸が多く、オメガ6系脂肪酸とのバランスが理想的で、生活習慣病の予防につながると話題を呼んでいます。(本書175ページより)
穀類を食べて育ったオメガ6系脂肪酸の多い牛肉を買うのだとすれば、脂身の少ない赤身肉を選ぶのがいいそうだ。
豚肉には疲労回復・スタミナアップ効果あり
豚肉も牛肉と同様、脂身には脂身のオメガ6系脂肪酸が多く含まれているので、脂身の少ない部位(赤身肉)を選ぶことが大切。代謝を促すビタミンB1が豊富なので、新陳代謝を促して免疫力を高めてくれるという。
鶏肉を選ぶなら脂身が少ないむね肉
もちろん同じように鶏肉も、脂身には脂身のオメガ6系脂肪酸が多く含まれている。ちなみに鶏肉は皮の部分が脂肪のかたまりなので、皮を取り除くと脂質控えめになる。
また、鶏むね肉は疲労回復効果のあるイミダペプチドが多いので、免疫力アップや体力づくりに役立つという。
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たとえばこのように、本書にはすぐ役立てられそうなノウハウが詰まっている。ウイルスに負けない体をつくるためにも、参考にしてみてはいかがだろうか?
文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)などがある。新刊は『「書くのが苦手」な人のための文章術』( PHP研究所)。2020年6月、「日本一ネット」から「書評執筆数日本一」と認定される。