正しい意味を理解し、適切に漢字が使えているのか、疑問を感じることが増えていませんか? 適当に漢字を使ってしまい、気付かないところで「恥をかいている」ということがあるかもしれませんね。
Google先生やデジタルデバイスの出現により、便利になった反面、情報の中身については十分な吟味が必要な時代になっております。あなたの“漢字の知識”は確かでしょうか? もう一度、確認しておいても良いかもしれません。
「脳トレ漢字」第90回は、「権化」をご紹介します。「美の権化」や「悪の権化」などの言い回しを見聞きしたことがあるのではないでしょうか。
脳トレ漢字の動画を見ながら“読んで書く”ことで、記憶力を鍛えながら、漢字への造詣を深めてみてください。
「権化」はなんと読む?
「権化」という漢字、読み方に心当たりはありますか? 普通に読むと「けんか」ですが……
正解は……
「ごんげ」です。
『小学館デジタル大辞泉』では、「ある抽象的な特質が、具体的な姿として現れたかのように思える人やもの」と説明されています。「悪の権化」や「美の権化」、「食欲の権化」など「○○の権化」といった使用が一般的です。
元々の意味は「仏・菩薩が人々を救済するために、この世に仮の姿となって現れること」です。それが転じて「ある概念が現れたように見える人・物」といった意味になりました。日常会話では、こちらの意味で使われる場合がほとんどでしょう。
「権化」の漢字の由来とは?
「権化」を構成する漢字を一文字ずつ見ていきましょう。「権」という字は「かりそめの、一時の」という意味を持っています。「化」は「化ける」すなわち「姿を変える」という意味ですから、「権化」という漢字は「かりそめの姿をとる」ということになります。
仏や菩薩がそのままの姿で現れるのではなく、不思議な人物や動物など「権(かりそめ)」の姿に「化」けて力を及ぼす…… そんな考え方から「権化」という言葉が生まれました。
「権化」の対義語「実化」
「権化」の対義語「実化」、読み方に心当たりはありますか?
正解は「じっけ」です。「実化」は「仏が人々を教化するためにその仏身を現わすこと」を意味します。仏が自らそのままの姿を現すことを指す仏教語です。「かりそめの姿で現れる」のが「権化」であるのに対し、「ありのまま、真実の姿で現れる」のが「実化」となります。
同じ「化」の字が使われていても、それぞれ読み方が異なるため、読み上げる際には注意が必要です。
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いかがでしたか? 今回の「権化」のご紹介は皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 日本語には、古くから親しまれてきた仏教語が元となっている言葉が多数存在します。由来を学ぶことで、現在の言葉の理解を深めることができるのではないでしょうか。
来週もお楽しみに。
文/豊田莉子(京都メディアライン)
アニメーション/鈴木菜々絵(京都メディアライン)
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