30万部突破『疲れをとりたきゃ腎臓をもみなさい』を監修し、脳神経を専門としてこれまで約1万人の患者を診てきた内野勝行先生の著書『1日1杯 脳のおそうじスープ』から、衰えてきた脳に必要な「脳のクリーニング」についてご紹介します。

文 /内野勝行

血糖値の乱高下を防ぐために、糖の吸収をおだやかにできる食品を食べよう

糖質の摂りすぎも、脳のゴミ、特に「アミロイドβ」が溜まる原因になります。アミロイドβとは、脳神経細胞を死滅させる毒性の高いタンパク質の一種のことです。しかし、高血糖を怖がるあまり、糖の摂取を必要以上に抑えることもまた、栄養バランスを崩します。

では、どうすれば脳にとって適当な量の糖を摂れるのでしょうか? ポイントは、血糖値の乱高下を防ぐために、糖の吸収をおだやかにできる食品を食べることです。

その簡単な見極め方が、「白い色の糖」を避けること。たとえば、精白した白米や小麦より、精白度が低い玄米や雑穀米、全粒粉を使ったパンやパスタの方が望ましいということです。

砂糖も、白糖よりも黒糖などの精白度の低いものを選ぶ方が望ましいでしょう。精白度の低い食品には食物繊維などが含まれているため、血糖値の上昇を緩やかにすることができます。

また、野菜やきのこ、海藻など、食物繊維が豊富に含まれる食品を一緒に食べることも有効です。食物繊維が体内に入ることで、糖が急激に吸収されて血中に放出されるのを防いでくれます。

理想は、野菜やきのこ、海藻を使ったおかずを先に食べてから穀類を食べること。これで血糖値の急上昇を防ぐことができます。

糖を摂り過ぎて血液中の糖が急激に増えると、それを処理するために大量のインスリンが分泌され、それでも処理しきれない糖は血液中に漂ったままになってしまい、その結果、血糖値が上昇します。これが「高血糖」と呼ばれる状態で、アミロイドβを増やすということがわかってきたのです。

インスリンが大量に分泌されると、それを分解する酵素も大量に必要となりま す。この酵素はアミロイドβを分解する働きをもっています。

しかし、インスリンが分泌され過ぎると、インスリン分解酵素はアミロイドβの 分解にまで手が回らなくなってしまうので、アミロイドβが蓄積してしまうことになります。

ここまでの話で、健康診断などで血糖値に異常がないから安心、などと思っていませんか? 実は、健康診断では異常が見られなくても、日頃から甘いものをたくさん摂っている人は、「血糖値スパイク」という状態に陥っている可能性があります。

血糖値スパイクとは、血糖値の急激な上昇と下降が見られる、つまり「乱高下」する状態のことで、これもアミロイドβを増やす原因になると言われています。

ただ怖いのは、健康診断のときは空腹の状態で採血するので、この状態を発見することができないということ。

そのため、普段は異常がない人でも、糖の摂り過ぎには注意が必要なのです。

血糖値を上げないための食事法

血糖値を上げないように、以下の点を気をつけましょう。

●甘いお菓子、ジャンクフード、清涼飲料水を摂り過ぎない(特に、空腹時には避ける)
●食物繊維が豊富な玄米や全粒粉のパンを選ぶ
●野菜、海藻、きのこを毎食食べる
●食物繊維が豊富な食品を食事の最初に食べる
●炭水化物を食べ過ぎない
●ごはんと一緒に肉や魚などのタンパク質が豊富な食品を食べる

「脳のおそうじスープ」の“素”の作り方

【材料(約8杯分)】
・トマト:大1個(200g)
・蒸し大豆、くるみ:各50g
・桜えび:10g
・すりごま:大さじ3(18g)
・ツナ缶(ノンオイル):2缶(140g)
・塩:小さじ1(6g)
・中濃ソース:大さじ1(18g)
・こめ油:少々

【作り方】
1 トマトをおろし金ですりおろす。
2 蒸し大豆とくるみを保存袋(大)に入れてくるみを砕きながら揉む。
3 2に1とその他の材料を入れる。
4 揉み混ぜてから平らにして冷凍保存する。

スープを飲むときは、冷凍庫からスープの素を60gほど割って取り出し、熱湯150mlを注ぎ、こめ油を少し垂らす。摂る頻度は1日最低1杯、時間帯はいつでもかまわない。

なぜ「脳のおそうじスープ」は効くのか

内野院長は、このスープには「脳の状態を整えるうえで有効な栄養素や機能成分が余すところなく含まれています」と説く。

例えば、ツナ缶のマグロの脂に含まれるDHAやEPA。これらは、血液サラサラ効果が高い点で特筆すべき栄養素だという。実は、アミロイドβ=「脳のゴミ」対策の前提として必要なのが、「血の巡りを良くしておくこと」。血管内に中性脂肪や悪玉コレステロールが多いと、いわゆる「ドロドロ血液」になる。こうなると、脳のゴミは血流に乗って体外へと排出されにくくなってしまう。また、認知症の2~3割は、「脳梗塞や脳出血・くも膜下出血など、脳の血管の病気によって引き起こされる脳血管型」だそうで、その意味でも、血液をサラサラの状態に保っておくことは重要。そのため、ツナ缶はスープの主要素材の一つとされている。

そして、トマトや桜えびには、抗酸化物質であるリコピンやアスタキサンチンが含まれている。内野院長は、アミロイドβ並みに怖い、ある種の脳のゴミとして活性酸素を挙げる。最近よく耳にする活性酸素は、普通の生活をしていても体内で発生する。これが過剰に発生すると、「さまざまな病気にかかるリスクが高まる」だけでなく、「アミロイドβの蓄積も促進」されるという。さらに、アミロイドβが活性酸素を作り出し、アルツハイマー病を発症するという研究報告もあるそうで、それを防ぐ抗酸化物質は、脳のおそうじの力強い味方になる。

* * *

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内野勝行(うちの・かつゆき)
30万部突破『疲れをとりたきゃ腎臓をもみなさい』を監修した名医。帝京大学医学部医学科卒業後、都内の神経内科外来や千葉県の療養型病院副院長を経て現在、金町駅前脳神経内科院長。脳神経を専門としてこれまで約1万人の患者を診てきた経験を基に、脳をクリーニングする「脳のおそうじスープ」を開発した。フジテレビ「めざましテレビ」やテレビ朝日「林修の今でしょ! 講座」などテレビ出演多数で、様々な医療情報番組の医療監修も務める。

 

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