文 /内野勝行
30万部突破『疲れをとりたきゃ腎臓をもみなさい』を監修し、脳神経を専門としてこれまで約1万人の患者を診てきた内野勝行先生の著書『脳のおそうじスープ』から、衰えてきた脳に必要な「脳のクリーニング」についてご紹介しましょう。
ここでは、脳の認知機能を低下させる恐ろしい脳のゴミ、「アミロイドβ(ベータ)」に関して、さらに詳しく解説していきたいと思います。
アミロイドβ(ベータ)とは、脳神経細胞を死滅させる毒性の高いタンパク質の一種です。正式には、アミロイドβ(ベータ)ペプチドと呼ばれています。このアミロイドβ(ベータ)が脳に溜まると、アミロイド線維という硬い糸くずのようなものになり、それが脳神経細胞のまわりに沈着して溜まっていきます。
そしてその量が増えると、脳の機能が低下していくというわけです。
免疫力を低下させる原因になるのも、アミロイドβ(ベータ)の恐ろしいところです。
九州大学・大学院医学研究院の研究によると、海馬や大脳皮質などがアミロイドβ(ベータ)によって破壊され、変性することにより「NK細胞」をはじめとした免疫系の働きが抑制されることが明らかになっています。
NK細胞とは、ナチュラルキラー細胞と呼ばれ、外部から進入したウイルスなどの異物を感知したら、すぐさま攻撃できる免疫細胞です。
風邪やインフルエンザの感染を防いだり、感染しても症状が軽くすむのは、このNK細胞のおかげなのです。
しかし、アミロイドβ(ベータ)が脳に溜まると、細胞がうまく機能しなくなり、風邪やインフルエンザなどの感症にかかりやすくなってしまいます。
アミロイドβ(ベータ)の厄介なところは、「大脳皮質」という部分に溜まりやすいという点です。大脳皮質とは、思考、記憶、知覚、自分の意志で体を動かす(随意運動)機能など、脳の高次機能を司る部位。つまり、アミロイドβ(ベータ)が脳に溜まると、人間らしく生きるうえで必要な脳の機能が低下してしまうことになります。
アミロイドβ(ベータ)は本来、体内で発生しても体外へ排出されていくしくみになっていますが、それが何らかの原因で除去できなくなり、脳内に溜まっていった結果、脳神経細胞の破壊が進んで認知症が発症すると考えられています。
問題なのは、日本国内だけではなく、世界中の研究者がアミロイドβ(ベータ)に関する研究を進めているにもかかわらず、アミロイドβ(ベータ)の発生を止めて、排出する決定打といえる方法を発見できていないという点です。
これが発見されれば、脳の認知機能の低下に関する治療が飛躍的に進歩することは間違いないでしょう。
ただし、そんなに悲観する必要はありません。近年では、アミロイドβ(ベータ)が溜まる原因と排出を妨げる要因がいくつか発見されています。それらを極力排除するような生活習慣を心がければ、アミロイドβ(ベータ)の害から脳を守ることができるはずです。