文/小林弘幸

「人生100年時代」に向け、ビジネスパーソンの健康への関心が急速に高まっています。しかし、医療や健康に関する情報は玉石混淆。例えば、朝食を食べる、食べない。炭水化物を抜く、抜かない。まったく正反対の行動にもかかわらず、どちらも医者たちが正解を主張し合っています。なかなか医者に相談できない多忙な人は、どうしたらいいのでしょうか? 働き盛りのビジネスパーソンから寄せられた相談に対する「小林式処方箋」は、誰もが簡単に実行できるものばかり。自律神経の名医が、様々な不摂生に対する「医学的に正しいリカバリー法」を、自身の経験も交えながら解説します。

【小林式処方箋】肉が大好きで、毎食のように食べてしまう人は、肉を口にする前に、付け合わせの野菜や果物からまず食べる。

肉好きな人に長寿の人が多い理由

自律神経の観点から言えば、肉食、大いに結構です。

私も肉が大好きで、ランチにひとりで、「いきなり!ステーキ」で500グラムのステーキを頬張る、なんてこともしてしまいます。

肉がなぜいいのか。それは自律神経の原料が、タンパク質だからです。中でも、肉や魚、卵などの動物性食品には、良質なタンパク質が豊富に含まれています。

大豆や小麦などにも、植物性タンパク質が多く含まれていますが、必須アミノ酸の種類、量などを比較すると、自律神経の原料としては、動物性タンパク質のほうがよりお勧めできるのです。

実際、ある調査では、総エネルギー量に占めるタンパク質由来エネルギー量の比率を、平均的日本人と100歳に達した人とで比較すると、100歳以上の方のほうが、タンパク質由来エネルギー量の比率が高いという結果も出ています(柴田博『肉を食べる人は長生きする』PHP研究所)。

漫画家のさいとう・たかをさんは、1968年に連載を開始して以来、『ゴルゴ13』を一度も休載したことがなかったそうですが、朝から肉を食べることが日課になっていたそうです。瀬戸内寂聴さんも肉好きで有名ですよね。あなたの周囲にも、「肉好き」の元気な高齢者の方がいるのではないでしょうか。

これらのことは、動物性食品の良質なタンパク質が、自律神経の働きを高めていることのひとつの証拠ではないかと、私は考えています。

脂肪対策に野菜、果物、ナッツ

ただし、プラスだけではありません。

肉などの動物性食品には、「脂肪」がつきものだということです。

脂肪の何が問題なのか。それは、脂肪が血液中で酸化すると、血液がドロドロになってしまうからです。すると、身体の隅々まできちんと酸素や栄養が運ばれません。老廃物も溜まりやすくなり、健康へのさまざまな悪影響が出てきます。動脈硬化のリスクも高まりますし、肥満という問題も出てくるでしょう。

自律神経の観点からいうと、腸内環境を著しく悪化させてしまうのです。

ではどうするか。

脂肪を血液中で酸化させにくくすればいいのです。そのためには、油脂の酸化を防ぐ「抗酸化成分」を含んだ食べ物を、肉と一緒にとればいい。

「抗酸化成分」と聞いても「?」かもしれませんが、ようは、人参、ほうれん草、小松菜など緑黄色野菜に多く含まれるビタミンのβ−カロテン、野菜、果物、芋類に多く含まれるビタミンC、ナッツ、かぼちゃなどに多く含まれるビタミンE、植物に存在する苦味や色素の成分であるポリフェノール(例えば、ブルーベリーやなすに含まれるアントシアニン、そばやかんきつ類、タマネギに含まれるルチン、豆類に含まれるイソフラボンなど)をとればいいのです。

ひと言で言うなら「肉を口にする前に、野菜や果物を食べる」。これだけです。

そんなに難しいことではありません。

例えばステーキには、必ず野菜の付け合わせがついてきますよね? とんかつにもキャベツの千切りや漬物。焼き肉だったら、タン塩にはレモンがつきものですし、カルビならサンチュを巻いて食べる。こうした食べ方は、野菜や果物の抗酸化成分を利用した、非常に理にかなったものなのです。

もし、焼き肉などで肉をガッツリ食べる際は、生野菜。「サラダ」を必ず注文し、まずサラダから口にすることを心がけてください。

そしてデザートに果物。これさえ守っていれば、毎日のように肉を食べていても問題がありません。

苦手な食材を食べるための一工夫

腸内環境を改善するためにも「生野菜」はお勧めです。

肉より先に生野菜を食べると、血糖値の急激な上昇も防いでくれますので、消化にも良く、太りにくくなります。

ただ、「生野菜」を推薦しながら、こんなことを告白するのはどうかと思いますが、私は、生野菜が大嫌いです。自律神経にプラスだとわかっていても、食べ物の好みばかりは致し方ありません。

そこで試行錯誤した結果、「ドレッシング」に辿り着きました。

ある日、会食で偶然口にした生野菜のサラダが、ドレッシングのおかげで、人生で初めて「おいしく」食べることができたのです。

そこで、近所のスーパーで、そのドレッシングのイメージに近いものを数本探し出し、いろいろと試した結果、「これだ!」というものを見つけました(ちなみに、すりおろしタマネギの入った醤油ベースのドレッシングです)。

以来、このドレッシングを持ち歩くようになり、いつでもどこでも、おいしく生野菜のサラダを食べることができるようになりました。これで、私の肉対策は万全です。

『不摂生でも病気にならない人の習慣』

小林弘幸 著
小学館

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文/小林弘幸
順天堂大学医学部教授。スポーツ庁参与。1960年、埼玉県生まれ。87年、順天堂大学医学部卒業。92年、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学医学部小児外科講師・助教授などを歴任。自律神経研究の第一人者として、トップアスリートやアーティスト、文化人のコンディショニング、パフォーマンス向上指導にも携わる。また、日本で初めて便秘外来を開設した「腸のスペシャリスト」でもある。自律神経の名医が、様々な不摂生に対する「医学的に正しいリカバリー法」を、自身の経験も交えながら解説した『不摂生でも病気にならない人の習慣』(小学館)が好評発売中。

 

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