取材・文/鈴木拓也
「万歩計」というウォーキンググッズがあるように、1日に1万歩のウォーキングをすることが健康維持に必要と考えている人は多い。
しかし、これは効果が薄いばかりでなく、むしろ健康を損なうこともあるという意外な事実が、群馬県中之条町の65歳以上の住民(約5,000人)を対象とした15年にわたる調査で判明している。
このいわゆる「中之条研究」を主導した青柳幸利医学博士によれば、1日のベストの歩数は8,000歩で、そのうち20分は「中強度」の歩き方をすることだという。
ここでいう「中強度」とは、歌は歌えないが、なんとか会話が可能な程度に息が上がったペース。これを定期的にやるのだ。といっても毎日でなくともOKで、適度にさぼりながらでも続けることで、健康によい効果が現れてくる。ただし、目分量で歩数や運動量を出すのは避け、身体活動計を使ってきちんと計測するのがコツという。
またこの「8,000歩、20分」は75歳未満を対象とした話であり、75歳以上の人であれば「5,000歩、7分半」が推奨する運動レベル。無理をしないことが、健康寿命を伸ばす秘訣となる。
「8,000歩、20分」という数字と同じくらい大事なのが、正しいフォームで歩くこと。ウォーキングコーチとして何冊もの関連著作を出している青山剛氏によると、ウォーキングをしている人のほとんどが、間違った歩き方をしているという。
青山氏の著作『医者に「歩きなさい」と言われたら読む本』では、正しいウォーキングのポイントは、「ひじを後ろに大きく引く」、「脚を身体の真下に着地するように意識する」のたった2点だという。これさえ遵守できれば、ウォーキングの基本はOKだ。
膝が固まっていたり、背中が丸く猫背気味だったりなど、身体的な問題で正しいフォームをとるのが難しい人向けの対処法も説明されているので、一読をすすめたい。
現代において、健康によい運動法とされるものは数え切れないほどあるが、ウォーキングほど簡単で、器械もお金もかからない運動法はそうない。しかも効果は専門家のお墨付きで、健康寿命も延ばせるとあれば、やらない手はないだろう。
春が本番を迎えるこれからの時期、「8,000歩、20分」ウォーキングを習慣づけてはいかがだろう?
【参考書籍】
『一日一万歩はやめなさい!』
(青柳幸利/廣済堂出版)
http://www.kosaido-pub.co.jp/new/post_2305.html
『医者に「歩きなさい」と言われたら読む本』
(青山剛著、山本雅人監修/池田書店)
http://www.ikedashoten.co.jp/book-details.php?isbn=978-4-262-16557-8
文/鈴木拓也
2016年に札幌の翻訳会社役員を退任後、函館へ移住しフリーライター兼翻訳者となる。江戸時代の随筆と現代ミステリ小説をこよなく愛する、健康オタクにして旅好き。