文/鈴木拓也

新型コロナウイルスのパンデミックが始まって1年半。
収束が見通せないなか、日本でもワクチン接種が本格化したことは一つの福音だろうか。
筆者(鈴木)のもとにも、封筒入りの接種券が届いたが、なぜか封を切らずそのままにしている。
「そこはかとない不安感がつきまとうから」というのが、その理由。
そんな折、読んだのが『新型コロナワクチン 副作用が出る人、出ない人』(近藤誠/小学館)。書名のとおり、ワクチンとその副作用をメインテーマにした1冊だ。本書は、変異株や免疫など周辺情報についてもよく書かれており、マスメディアやネットだけでは把握しにくいこのウイルスの全貌をつかむのにも好適。その一端を紹介しよう。

死亡率は高くない変異株

新型コロナウイルスについて、目下一番の関心事は、変異株の存在だろう。今春の第4波においては、「ほとんどのウイルスが、感染力の強い英国型に置き換わった」というような報道が飛び交った。従来型と比べて、「40~50代の重症化のリスクが大」などとも報じられ、肝を冷やした方も多かったにちがいない。

しかし、蓋を開けてみると「英国型で重症化し、死亡する率は従来型と同じ」というのが、英国で出された研究の結論(4月時点)。それ以前の研究結果は、あくまでもコンピュータによるシミュレーションによるもので、「英国型は死亡率が高い」という説は覆されている。
では、インドでは1日4千人以上の死者を出した「インド株」はどうか? 著者はこのように評している。

インド株(WHOの命名では「デルタ株」)の感染力は強く、人々の間を広がっていくスピードが速いようです。いずれ日本でも変異株の主流になるでしょう。しかし、毒性(病原性)が従来型より強い証拠はありません。(本書30pより)

また、インドでの死亡者数の多さは、14億人弱という人口の多さによる点も指摘。感染者のうち何パーセントが亡くなったかという致死率でみれば、日本は1.69%(もっぱら従来型)、インドでは1.09%だという。

では、こうした変異株に対し、現行のワクチンは効くのだろうか? いち早くワクチン接種がスタートした英国の例では、感染者数・死者数ともに激減している。だが、同時期に厳格なロックダウンも実施されたため、「その影響はかなりあるのでは」と、著者は疑問符をつける。

「極めて多い」従来のワクチンの副作用死

言うまでもないが、新型コロナ以外にも感染症向けワクチンが世に出ている。大人にとってはインフルエンザワクチンが一番メジャーだろうし、子どものうちに打っておくべきとされるワクチンも何種類かある。
それほど身近で心理的抵抗が少ないがゆえに、著者はこう警告する。

これまで「インフルエンザ」「はしか」「肺炎球菌」など多種多様な感染症にワクチンが用意され、多くの日本人がいろいろなワクチンを打ってきました。
それにしては、読者の皆さんは重大な事実を知らずにいます。その筆頭は、各種ワクチンによる「副作用死」が極めて多いという事実でしょう。(本書72pより)

著者は、具体的にワクチン名を挙げて解説している。例えば肺炎球菌ワクチン。接種して50分で死亡した人がいるという。この方は94歳で、不整脈など病気を抱えている身であった。とはいえ、ワクチンと死亡の因果関係を検討する厚労省と審議会は、「情報不足のため、ワクチン接種との因果関係は判断できない」と結論。

接種から1時間以内に急死したケースで、ワクチンの副作用でなかったら、何が原因だというのでしょうか。
審議会と厚労省は、このように強引な認定をして「ワクチン副作用死」はないかのように装ってきました。新型コロナワクチン接種後の死亡例を検討する際にも、その強引さが維持されています。(本書77pより)

肺炎球菌ワクチンについては、その有効性もあやしいようだ。オランダで65歳以上の男女84000人をプラセボ群(生理食塩水注射)とワクチン接種群に分け、4年ほど経過を見たところ、総死亡数で変化なし。ちなみに、肺炎球菌肺炎で死亡した人の数は、プラセボ群で2人、ワクチン群も2人であった。著者は、「たとえ高齢でも、ワクチンを打つ必要がないし、打っても効果がない」とバッサリ。

新型コロナワクチンを打つ必要性は?

では、新型コロナワクチンについてはどうか。
例えばファイザー製薬のワクチンは、英国株に対しての有効率は89.5%、南アフリカ株では75.0%と威勢のいい数値が並ぶ。
こうした有効率は、臨床試験に基づいてはじき出されるが、ワクチンを接種する被験者は基本的に「健康な人」であることに注意が必要だ。

つまり試験の「被験者に採用しない」という「除外基準」には、「ビア樽型の肥満」や、「高血圧」「糖尿病」「慢性肺疾患」「腎機能低下」など基礎疾患があるケースを除いていました。モデルナやアストラゼネカの基準も大同小異です。
また年齢に関してはファイザー試験では、85歳が上限で、75~85歳は全被験者のわずか4%です(FDA Briefing Document)。
したがって、ワクチンが切実に必要とされている「基礎疾患」があるケースや、施設に入所しているような、虚弱な「高齢者」での有効率や副作用は不明なのです。(本書116pより)

ひるがえって日本では、医療従事者に続き、高齢者や基礎疾患がある人が優先接種されている。これでは心配しない方がおかしい。

実際、ワクチンの副作用とみられる死亡者が出ている。わが国での最初の死亡者は、61歳の医療従事者。今年の2月26日に1回目の接種を受け、3日後に死亡した。死因はくも膜下出血だが、審議会は「ワクチンとの因果関係は評価不能」と結論。審議会によれば、4月初め、医療関係者の約91万人に接種した段階で、3~19日後に6人が死亡したと公表しているが、すべて「因果関係が評価できない」まま。そして、5日26日時点で、ワクチン接種後の死亡者数は85人にのぼり、厚労省に報告されないケースも含めればもっと多いだろうと指摘する。この事実をどう見るべきか。

これから接種対象を広げて、もし1200万人の20代全員に打つと、72人が副作用で亡くなるという計算になります。
これに対し、新型コロナそのもので20代は何人亡くなっているでしょうか。答えは全国で3~4人程度です(情報が錯そうして曖昧な部分がある)。どうみても、ワクチン接種で亡くなる人のほうが多い。(本書181pより)

高齢者は言わずもがな。本書の著者で「近藤誠がん研究所 セカンドオピニオン外来」を運営する近藤誠医師は、「僕は、ワクチンを打つつもりが全然ない」と記す。新型コロナは「ただの風邪」としか思えず、ワクチンは副作用が恐ろしいからだと本音を明かす。
もし、ワクチン接種券を前に迷っているなら、本書を読んでからの判断でも遅くはないだろう。

【今日の健康に良い1冊】

『新型コロナワクチン 副作用が出る人、出ない人』

近藤 誠 著
小学館

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文/鈴木拓也 老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は神社仏閣・秘境巡りで、撮った映像をYouTube(Mystical Places in Japan)で配信している。

 

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