文/満尾正
新型コロナウイルス感染症など、さまざまな病気に負けないための「免疫力」は、日々の食事や生活習慣の改善によって、大幅に高めることができるそうです。しかし、巷に溢れる健康や免疫力に関する知識は刻一刻とアップデートされ、間違った情報や古びてしまったものも少なくありません。コロナ禍の今、本当に現代人が知っておくべき知識とは何でしょうか。著書『世界最新の医療データが示す最強の食事術 ハーバードの栄養学に学ぶ究極の「健康資産」の作り方』が話題の満尾正医師が解説します。
コロナ禍を乗り越えるために
今こそ「正しい栄養学」に基づき、日々の食事を自分の体の“優良資産”に変える方法を、真剣に考えるべきときです。
それができる人とできない人とでは、人生の質を決める健康度合いに大きな差が出るだけでなく、その未来は命の行方そのものさえ左右するシビアなものになります。
「COVID-19」(=新型コロナウイルス感染症、以下、新型コロナと略して表記)のパンデミック(世界的大流行)は、世界の様相をすっかり変えました。私たちの生活や仕事、ひいては人間関係にまで多大な影響を及ぼしています。
流行当初は、このウイルスの特性についてほとんどわかっておらず、不顕性(感染症状が発症していない状態)のウイルス保持者が動き回ってしまったことで感染が広がってしまいました。
どのような症状が出るのか、それにどのように対応すればいいのかについて、医療現場も手探り状態でしたから、適切な治療が行えずに失われた命も多々あったことでしょう。
一人ひとりが「目に見えない敵」と一緒に暮らすことを余儀なくされ、経験したことのない恐怖を味わいました。それは今も続き、隣人に対してすら疑心暗鬼になっている人も多いことでしょう。
「老後2000万円必要と言われ、100歳まで生きるための資金をどうするか心配していたのに、それどころじゃない。もはや1カ月後の命だってわからないじゃないか」
まさに、私たちの人生観にパラダイムシフトが起きたと言ってもいいでしょう。
一方で、だんだんと検証が進むにつれ、アジア諸国ではさほど致死率は高くないこともわかってきて、人々は冷静さを取り戻し、自分らしい生活を送る方法を探っています。
時間はかかるかも知れませんが、新型コロナについては、その対処方法が確立されるはずです。
ただし、また同様のことは起きます。人類の歴史は新しい疫病との戦いであり、どれほど文明が進化しても、それは変わることはありません。
むしろ、人間社会が進化すればするほどウイルスも賢くなり、複雑な戦いを挑んでくるようです。新型コロナは、まさにそんなウイルスと言えます。
私たちは今後も、あらゆる病原微生物(ウイルスや細菌)と共存していかなければなりません。
かつては「死の病」と呼ばれたような疾病でも、治療法が確立されてしまえば恐れるには及びません。たとえば、天然痘や結核がその典型です。天然痘は人類史はじまって以来、長い歴史をもつ感染症でしたが、1980年に地球から撲滅されたとされています。一方、結核で命を落とす人は今もいますが、治療法が確立されており、体力がない高齢者や持病のある人など、身体的弱者が圧倒的に不利というわけではありません。
ところが、新型コロナのような新しい疫病においては、負ける人と生き残る人が明確に振り分けられてしまいます。それは、治療法が確立されていない以上、最後は本人の力に頼るしかないからです。
みなさんは、ここ数カ月の間に、「免疫力」という言葉を何度も耳にしたのではないかと思います。新型コロナに感染した場合、その転帰はさまざまです。
なんの症状も出ないのか。症状が出たとしても軽症なのか重症なのか。あるいは命まで落としてしまうのか。
それを決めるのは本人の免疫力だということが、世界中で共有されました。
もっとも、健康意識の高い人たちの間では、風邪から「がん」まで、あらゆる病気に免疫力が関わっていることは以前からよく知られています。
しかしながら、そもそも免疫力とはなんなのか、どうすれば身につくのかについて、正しく理解している人は案外、少ないのです。
満尾正(みつお・ただし)/米国先端医療学会理事、医学博士。1957年横浜生まれ。北海道大学医学部卒業後、内科研修を経て杏林大学救急医学教室講師として救急救命医療の現場などに従事。ハーバード大学外科代謝栄養研究室研究員、救急振興財団東京研修所主任教授を経た後、日本で初めてのアンチエイジング専門病院「満尾クリニック」を開設。米国アンチエイジング学会(A4M)認定医(日本人初)、米国先端医療学会(ACAM)キレーション治療認定医の資格を併せ持つ、唯一の日本人医師。著書に『世界最新の医療データが示す最強の食事術 ハーバードの栄養学に学ぶ「究極の健康資産」の作り方』(小学館)など。