50歳で選んだ“俳優”という仕事。朝食の習慣がなかった以前と異なり、今はパンとヨーグルト、紅茶の朝食が決まりだ。

【黒岩徹(くろいわ・てつ)さんの定番・朝めし自慢】

前列左から時計回りに、バタートースト、プレーンヨーグルト(マンゴー・玄米フレーク)、紅茶ポット、野菜サラダ(サニーレタス・ブロッコリー・ミニトマト・黄パプリカ・ベビーリーフ)、紅茶、写真中央はタイのグリーンカレー風スープ(鶏もも肉・マッシュルーム・ピーマン・黄パプリカ・パクチー)。トースト、スープ、紅茶の器は1992年のイタリア旅行で購入したもの。マンゴーは冷凍品を利用。野菜サラダには市販の野菜ドレッシングをかける。

6時半起床、朝食は7時半頃。「今朝は僕の朝食のフルコースですが、時間がない朝もバタートーストと玄米フレーク入りヨーグルト、紅茶は欠かしません」と、食卓に着く黒岩徹さん。

初舞台は50歳と7か月。ギリシア悲劇を題材にした『アンチゴーヌ』で、アンチゴーヌの父・オイディプス王を演じた。いささか遅すぎる俳優人生のスタート。これには理由がある。

1961年、福岡市に生まれた。少年時代の思い出は、ボクシングの世界王者・具志堅用高さんだ。

「具志堅さんが世界チャンピオンになったのは、僕が中学3年の時。あの美しい勇姿に心が躍り、ボクシングをやろうと決めたのです」

大学4年間はボクシングに明け暮れた。4年時には関東大学トーナメントのフェザー級決勝まで駒を進めたが、残念ながら準優勝だった。ボクシングに惹かれたのは、世界チャンピオン・具志堅用高さんの影響だ 。

立教大学法学部入学の日に、体育会ボクシング部に入部。ボクシングにすべてを捧げた4年間であった。卒業後は山一證券に入社。30歳でイギリス・ロンドン勤務となり、その後の7年間を海外で過ごす。が、時まさにバブル崩壊期。日本経済は先の見えない真っ暗なトンネルに突入していく。

山一證券が破綻した1997年には香港に駐在していたが、程なくして米系の投資銀行モルガン・スタンレーに入社。仕事自体は魅力的だったが、実力至上主義の世界だ。プロ野球選手と同様の年俸制で、成績が出なければ即解雇。そんなプレッシャーの中、ストレス発散のひとつが観劇であった。そこで気づいたことがある。

「顧客に営業するためのプレゼン(テーション)は、演劇と同じじゃないか。僕が舞台俳優で、顧客が観客、演出は自分自身です」

以前から体力、気力、知力が残っている50歳での引退を決めていたが、49歳3か月でその時が来た。金融の世界に別れを告げ、俳優人生がスタートしたのだった。

1991年、山一證券ロンドン支社に赴任。その翌年にイタリアを旅し、ローマのトレビの泉にコインを投げる黒岩さん。31歳の頃で、朝食に登場する器はこの時に求めたものだ。

玄米フレーク入りヨーグルト

朝食を摂るのも作るのも、俳優になってからだ。勤め人の頃は1分でも長く寝ていたかった。けれど、もともと料理は嫌いではない。

「中学生の頃、テレビで『前略おふくろ様』の萩原健一さんを観て、板前に憧れていた時期もありました。今、作るのは主に酒肴。“おふくろの味”系が多いですね」

板前に憧れたこともあるほど料理は好きだが、「勤めていた頃は年に1~2回しか作る時間がなかったけれど、今は包丁を持たない日のほうが少ないかな」と、朝食の準備をする黒岩さん。
手作りの酒肴でシングルモルトウイスキーを楽しむ。酒肴は左からポテトサラダ、切り昆布の煮物、人参の糠漬けと茹でブロッコリー。切り昆布の煮物の味の決め手は「だし道楽(二反田醬油/広島県江田島市大柿町大君1937 電話:0823・57・6575)」。黒岩家常備の調味料だ。

昨年の自粛期間中には糠漬けにも挑戦。糠漬けは奥が深くて、まだ味が決まらない。生来の凝り性ゆえ、試行錯誤の日々が続く。

朝食には玄米フレーク入りのヨーグルトが定番だ。時には、これに果物が加わることもある。健康の秘訣は、このひと皿である。

新しい映像媒体にも進出。俳優という第二の人生は、世界が舞台だ

俳優人生は、芸能プロダクションを探すことから始まった。

「まず、つまずいたのが年齢です。どこでも求められているのは18歳から30歳くらいまでの人ばかり。そこで年齢不問、シニアに特化したプロダクションを探し、49歳の夏から演技のイロハを教わりました。その後もほぼ毎日稽古に励み、そうして1年後には、『アンチゴーヌ』で初舞台(前出)を踏むことができました」

さらに、他の養成所にも2年ほど通い、演技の勉強を重ねた。これまでは主に舞台を中心に活動してきたが、今は映像の世界にも関心がある。

舞台『リア王』のグロスター伯爵の衣装で(2018年)。オーディションで選ばれた役で、5年前から毎年演じてきたが昨年は中止に(衣装デザイン/時広真吾、撮影/八雲浄麿)。
映画『風待ちの島』では、ヒロイン(小山田モナさん)の相手役を演じた。歴史と自然豊かな島根県隠岐島を舞台にした、大人のラブストーリーだ。公開5年目、今後もスローシネマとして上映予定だ(小山田モナ監督『風待ちの島』より)。

「昨年の新型コロナ禍の自粛期間中、動画配信サービスなどを通じ、世界中でさまざまな国の映画やドラマを楽しむ人が増えました。言語や配給の垣根が低くなり、俳優の仕事もグローバル化が進みつつあります」

俳優という道を選んで、まだ10年。海外生活で培った経験や語学力を生かし、海外のプロデューサーの目にとまる存在になれれば嬉しい。第二の人生も、世界が舞台である。

俳優は体が資本。ストレッチ45分、筋トレ15分の運動が日課だ。「以前は運動といえばジョギング程度でしたが、今は“筋膜リリース”などで体を柔軟に保っています」と、自宅スタジオで。
ドラムが趣味だ。教室に通い、2005年~2012年まで仲間たちとビートルズのコピーバンドを組み、ドラムを担当した。バイクも楽しみのひとつで、手前にあるのは愛車ナイトロッド(ハーレーダビッドソン)のミニチュアだ。

※この記事は『サライ』本誌2021年5月号より転載しました。年齢・肩書き等は掲載当時のものです。 ( 取材・文/出井邦子 撮影/馬場 隆 )

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