文/満尾正

新型コロナウイルス感染症など、さまざまな病気に負けないための「免疫力」は、日々の食事や生活習慣の改善によって、大幅に高めることができるそうです。しかし、巷に溢れる健康や免疫力に関する知識は刻一刻とアップデートされ、間違った情報や古びてしまったものも少なくありません。コロナ禍の今、本当に現代人が知っておくべき知識とは何でしょうか。著書『世界最新の医療データが示す最強の食事術 ハーバードの栄養学に学ぶ究極の「健康資産」の作り方』が話題の満尾正医師が解説します。

ビタミンDを多く含むオススメ食品

とにかく魚を食べる生活を心がける!

ビタミンDが豊富な食品としては、まず魚が挙げられます。

サーモン、メカジキ、サーディンなどにとくに多いようですが、あまり細かく考えずに魚を食べてください。

魚は、マグロのような大きな回遊魚よりも、小さい魚のほうが水銀が蓄積しておらず安心です。

さらに、DHA/EPAという良質の油を摂ることも考えると、青い魚がおすすめです。具体的には、イワシ、サンマ、サバなどがいいでしょう。

ヒラメ、タイ、ウナギにも多く含まれ、とにかく魚を食べる生活でビタミンDが増えると考えてください。

そのほか、魚以外では、卵や牡蠣、タコにも比較的多く含まれています。

ちなみに、きくらげやしいたけに多く含まれるのは「ビタミンD2」です。

体が必要としているのは「ビタミンD3」ですので、キノコ類ではビタミンD3を十分に補うことができません。

ただし、キノコ類が健康にいい食材であることはたしかです。

腸内細菌を整えてくれる食物繊維もたっぷりで、かつカロリーはほぼゼロ。肥満を避けたい働き盛りの世代にもっと摂って欲しい食品です。

結核の療養に「日光浴」がある理由

戸外の歩行運動で「5歳長寿」のデータも!

かつては、命を落とす恐ろしい病気の代表格は結核でした。治療薬ストレプトマイシンが誕生するまで、結核患者ができることは、療養くらいしかありませんでした。

療養の大事な要素に日光浴がありました。

サナトリウムという人里離れた隔離病棟に入院し、そこで日光浴をしながら結核が自然治癒していくのを待つのです。

当時は、日光浴をすることで実際に治癒する患者さんが増えたから、それが推奨されたわけですが、今はそのメカニズムもわかってきています。

日光を浴びることでビタミンDが増え、マクロファージという免疫細胞を活性化して結核菌を退治することができていたのです。

免疫細胞の活性化は、がんをはじめとするあらゆる病気、新型コロナのような感染症に対抗するためにも必須であり、日光浴でビタミンDを増やすことは、もちろん有効です。

私たち医療従事者の間では、マサイ族の血中ビタミンD濃度が理想的な数値であることが知られています。

彼らは野外で過ごす時間が長いからだと思います。

スウェーデンの学者が、約30万人規模の調査を行ったところ、ゴルフをやらない人に比べ、定期的にゴルフを楽しむ人は平均して5歳寿命が長かったという報告をしています。

なぜゴルファーが長生きできるのか?

その要因として、戸外で日光を浴びてビタミンDを増やしながら、歩行運動をしていることが挙げられています。

1日15分から始める「正しい日光浴」

ただし、あまり浴び過ぎれば今度は皮膚がんの心配も出てきます。昔と違ってオゾン層が破壊された今は、日焼けの害も大きく、強い日差しを長時間にわたって浴びれば皮膚がんの恐れも増します。

こういう時代にあって、どの程度の日光浴が適切なのでしょうか。

春から秋の晴れている日なら半袖で15~30分、曇りの日は倍の30~60分。それくらいの日光浴を週に3回行うのが適切とされています。

日差しの弱い冬場は、もっと長い時間を必要とします。

春や秋の季候の良いときには、日光浴も楽しくできますが、寒い冬や梅雨時に日光浴をすることはまず不可能です。

とくに、1~3月にかけてのインフルエンザのピークは、日差しも弱いため、血中ビタミンD濃度が一年間でもっとも低下する時期と一致していることが指摘されています。

もっとも、ただ健康のためにというだけでは続きません。楽しみも加えましょう。

私たち抗加齢医療に携わる専門医の間では、ハイキングやゴルフなどを楽しみながら自然に日光を浴びることが推奨されています。

ゴルフは、1ラウンドで4~5時間、戸外で日差しを浴びています。ハイキングもだいたい同じようなものでしょう。

もちろん、趣味で畑いじりを始めるのもいいでしょう。

そういう「楽しんでいるうちに日光浴もできちゃった」という時間を、週に1回くらい持ってはいかがでしょうか。

サプリメントなら「1日20円程度」

高齢者は若い人に比べて、そもそも皮膚でビタミンDをつくる力が弱いこともわかっています。年齢を重ねたら、日光を積極的に浴びるだけでなく、食事やサプリメントでビタミンDを増やす努力が必要です。

ビタミンDのサプリメントは、ウールオイルと呼ばれる羊毛の根元に付着している油分から採取した「ラノリン」という成分をもとにつくられます。希少なものではないので比較的安価に手に入ります。1日2000IU摂取する場合、20円かかりません。ざっくり言うと、1カ月分で500円程度です。

下の図にあるのは、私のクリニックの患者さんに1日1000IUのサプリメントを摂取してもらい、約3カ月後の結果を男女別にまとめたものです。

それぞれ改善傾向は見られますが、とくに男性の場合、合格ラインの血中濃度30以上になかなか届きません(下、図11参照)。

そこで1日2000IUくらい摂ることで、血中ビタミン濃度をなんとか30くらいに持っていくことができるはずです。1錠5000IUのサプリメントなら、2日に1回の摂取が目安です。

なお、ビタミンDは肝臓で合成されるために、肝機能が落ちていると血中濃度は上がりにくくなります。

また、脂溶性ビタミンであることから、肥満者では、血中のビタミンDが脂肪に溶けてしまい、血中濃度が上がりにくいことも注意点です。医師の指導を受けながら、適切に摂取していくことをおすすめします。

満尾正(みつお・ただし)/米国先端医療学会理事、医学博士。1957年横浜生まれ。北海道大学医学部卒業後、内科研修を経て杏林大学救急医学教室講師として救急救命医療の現場などに従事。ハーバード大学外科代謝栄養研究室研究員、救急振興財団東京研修所主任教授を経た後、日本で初めてのアンチエイジング専門病院「満尾クリニック」を開設。米国アンチエイジング学会(A4M)認定医(日本人初)、米国先端医療学会(ACAM)キレーション治療認定医の資格を併せ持つ、唯一の日本人医師。著書に『世界最新の医療データが示す最強の食事術 ハーバードの栄養学に学ぶ「究極の健康資産」の作り方』(小学館)など。

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