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文/満尾正

新型コロナウイルス感染症など、さまざまな病気に負けないための「免疫力」は、日々の食事や生活習慣の改善によって、大幅に高めることができるそうです。しかし、巷に溢れる健康や免疫力に関する知識は刻一刻とアップデートされ、間違った情報や古びてしまったものも少なくありません。コロナ禍の今、本当に現代人が知っておくべき知識とは何でしょうか。著書『世界最新の医療データが示す最強の食事術 ハーバードの栄養学に学ぶ究極の「健康資産」の作り方』が話題の満尾正医師が解説します。

ビタミンDはあらゆる健康被害を防ぐスーパー栄養素。日本では2018年にようやく保険適用

最近になって大きな注目を集めているビタミンDですが、最初にその重要性を訴えたのは、アメリカのマイケル・ホーリック博士です。彼は、皮膚でビタミンDがつくられることを発見し、「ドクター・ビタミンD」と呼ばれるようになりました。

すでに、2007年の時点で、健康維持に必須のビタミンDが、いかに現代人に不足しているかについて、NEJM(The New England Journal of Medicine)に有名な論文を書いています。NEJMは、世界で最も権威ある医学誌です。

一方、日本では、2018年ようやくビタミンDの著効(著しく有効であること)が認められ保険適用されました。

しかし、これはあくまでも骨粗鬆症予防の目的に限られます。

これまで日本の医学界では、ビタミンDはもっぱら骨を丈夫にするために必要な栄養素と考えられてきました。もちろん、それは間違いではありません。
「骨にはカルシウムだ」と思っている人は多いでしょうが、いくらカルシウムを摂っても、ビタミンDがないと小腸からカルシウムが吸収されないために、強い骨をつくることはできません。
 ビタミンDの役割は骨をつくることに留まりません。ざっと並べるだけでも、以下のような働きがあることがわかっています。

●カルシウム代謝を正常化し骨を強くする
●免疫力の増強
●がん、感染症、自己免疫疾患の予防
●動脈硬化、心臓疾患の予防
●糖尿病予防
●うつ病、SAD(社交不安障害)など精神疾患の予防
●脳神経を守り認知症を予防
●筋力の低下を予防
●死亡率低下
●アンチエイジング効果

つまりビタミンDは、免疫力をアップし、あらゆる健康被害から私たちを守ってくれる「スーパー栄養素」と言えます。

ところが、新型コロナ対策の点からも非常に重要なこのビタミンDは、現代の日本人に圧倒的に不足しているのです。

ビタミンDを増やす3つの方法

マイケル・ホーリック博士が、2007年のNEJMの論文で示した血中ビタミンD濃度の適正値は、下のようなものでした(図7参照)。

今、彼は40~60を理想としていますが、私はこの表にあるように40~80を至適値と考えています。

ビタミンDはとても重要であるにもかかわらず、なかなか食事から増やせない人も多く、私のクリニックではサプリメントを活用しています。サプリメントを用いると、60を超えることはままありますが、それによって健康被害は出ません。150を超えるようなことがなければ、なんら問題は起きません。

それよりも「不足」による健康被害のほうが深刻な問題と考えます。

先に述べたように、新型コロナでは、血中ビタミンD濃度が「30」を超えるかどうかが、まさに命の分かれ目でした。すなわち、30以下は明らかに「不足」と考えていいのですが、日本人の平均は25くらいしかありません。

私のクリニックを訪れた1700名ほどの患者さんのデータ集計でも、そのことははっきりしています(上、図8 参照)。初診時には、約8割近くの人たちは30以下で、ホーリック博士も推奨する40超の人は5%しかいません。

抗加齢医療、予防医療を主体としている私のクリニックを訪れるのは、もともと健康に対する意識が高い人が多いのですが、それでもこの結果です。

私たちの体内でビタミンDをつくりだす方法は、次の3つしかありません。

・食事から摂る(とくに魚を食べる)
・日光を浴びる
・サプリメントを飲む

皮膚がんや日焼けを避けたいがために日光に当たらず、魚をあまり食べない現代人が普通の生活をしていると、どうしてもこうした数値になりがちなのです。後述しますが、ビタミンDのサプリメントは安価ですから、積極的に使って欲しいところです。

がん再発率を下げるという研究報告も

私がビタミンDのサプリメントを推奨すると、とくに男性からこんな意見が出ます。

「俺はとくに悪いところもないから今は必要ない。具合が悪くなったら飲むよ」

しかし、それでは遅いのです。

たとえば、東京慈恵会医科大学の浦島充佳教授が発表した、ビタミンD摂取と消化器がんの再発に関する論文があります。

浦島教授らの研究グループは、消化器がんの手術を終えた患者さん417名を対象に、毎日2000IU(=50μg)のビタミンDを服用するグループとしないグループに分けて、約3年半にわたり観察しました。その結果、ビタミンDを服用したグループのがん再発率は23%だったのに対し、服用しないグループは31%だったそうです。

さらに、研究開始前の血中ビタミンD濃度が20~40の範囲内であった患者さんに限って調べてみると、ビタミンDを服用したグループの再発率は15%しかなく、服用しないグループの29%に比べて14ポイントも低かったのです。

一方で、研究開始前に20に満たないようなビタミンD欠乏症状態にあった患者さんでは、術後にビタミンDを服用してもしなくても再発率に差は見られませんでした。

これがなにを意味しているのか。

つまり、土台としての血中ビタミンD濃度を普段からしっかりつくりあげておかないと、病気になってから、慌てて摂ってもに間に合わないということなのです。

次のパンデミック、あるいはあなたを襲うかも知れない病に備え、普段からビタミンDを補充しておきましょう。

ビタミンD不足の子どもに多い難病

上のグラフ(図9)が示しているのは、韓国の若い世代の血中ビタミンD濃度についての調査結果です。

これを見ると、20代男性の65%が、女性に至っては8割が血中ビタミンD濃度20未満という数値です。

日韓共通して若い女性は、お肌のために日光を避け、また魚もあまり食べないのでしょう。当然と言えば当然の結果なのかも知れません。

しかしながら、「当然だね」で済ませている場合ではないのです。

血中ビタミンD濃度が低いお母さんから生まれてくる赤ちゃんは、やはりビタミンDが欠乏するからです。

また、血中ビタミンD濃度が低いお母さんの母乳栄養で育てると、子どものビタミンD欠乏度合いがひどくなります。その結果、子どもが「くる病(小児骨軟化症)」にかかりやすくなります。

くる病について、私は過去の遺物だと思っていました。ところが、赤坂ファミリークリニックの伊藤明子院長によれば、10年間で患者数が2.5倍にも増えていることがわかっています(下、図10参照)。

大阪市立総合医療センターの依藤亨・小児医療センター長は、2008年に「頭蓋ろう」の赤ちゃんが増えていることを指摘しています。

頭蓋ろうは、くる病の初発症状で、赤ちゃんの頭頂部や後頭部が固まらずにペコペコした感じになります。小児科の臨床現場で、こうした所見の増加が深刻な問題となっているのです。

実際に、日本外来小児科学会の発表によれば、母乳栄養を中心に育った乳児(0~6カ月)の75%がビタミンD不足で、50%が欠乏状態だったと報告されています。

昔と比べて、今は高齢出産が増え、新生児の健康リスクが懸念されています。それに加えて、お母さんは日に当たらないからビタミンDがつくれず、魚を食べないから食事からのビタミンDも摂れない。こういう状況では、赤ちゃんの骨に問題が起きてもちっとも不思議ではありません。

もちろん、母乳には免疫に関わるタンパク質など重要な成分が含まれています。でも、現代女性の母乳には、圧倒的にビタミンDが足りません。

残念なことですが、母乳信仰は捨てて、栄養素を調整したミルクを与えることも選択肢の1つです。

満尾正(みつお・ただし)/米国先端医療学会理事、医学博士。1957年横浜生まれ。北海道大学医学部卒業後、内科研修を経て杏林大学救急医学教室講師として救急救命医療の現場などに従事。ハーバード大学外科代謝栄養研究室研究員、救急振興財団東京研修所主任教授を経た後、日本で初めてのアンチエイジング専門病院「満尾クリニック」を開設。米国アンチエイジング学会(A4M)認定医(日本人初)、米国先端医療学会(ACAM)キレーション治療認定医の資格を併せ持つ、唯一の日本人医師。著書に『世界最新の医療データが示す最強の食事術 ハーバードの栄養学に学ぶ「究極の健康資産」の作り方』(小学館)など。

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