新型コロナの影響もあり、家で過ごす時間が多くなった方も多いことだろう。もちろん外出を自粛しなければならないという事情が影響しているわけだが、どうせなら家での時間を楽しく過ごしたいものである。

しかし、だからこそ「体にとって快適な状態に室内を整えること」が大切なのだと、ジャーナリストである『室温を2度上げると健康寿命は4歳のびる』(笹井恵里子 著、光文社新書)の著者は主張する。

考えてみれば私たちは一日の大半、つまるところ人生のほとんどを“室内”で過ごしているわけですから、室内環境が体に影響を与えるのは当たり前ともいえますね。さまざまな研究結果から、健康を守る家とは「室温」「湿度」が最も重要で、そのほか「光」「空気の質」「室内の色」なども関係することがわかっています。(本書「はじめに」より引用)

そのことに関連して、ある研究が紹介されている。慶應義塾大学伊香賀俊治教授らが、大阪府の千里ニュータウンで80世帯を対象に行った「脱衣所の室温と要介護の関係」に関する調査だ。

脱衣所の平均気温が「12度の寒冷群」とくらべ、「14度の寒冷群」は健康寿命が4歳延伸していたというのである。わずか2度の違いが、体にそれほど大きな影響を与えるのだ。

それは重要な指摘だが、現実的に日本では大半の人が、冬の室内温度を18度以上に保てていないことが国土交通省の調べで明らかになっているという。

そこで本書では、いま住んでいる家をいかに「健康を守る家」「健康寿命を延ばす家」にしていくかに焦点を当てているのである。そのなかから、「冬の室内を暖かくする7つの住まい方」に焦点を当ててみよう。

住まい方(1)……室内計を設置し、部屋ごとの温度差、湿度に気を配る

全室に室温計を備えておくことは、基本中の基本。一番寒い部屋はどこか、家の中にどの程度の温度差があるのかを実際に測ってみると、思わぬ結果が出てくるからだ。

しかも居間→廊下→脱衣所などと移動する際、室内ごとの温度差があると血圧が上がりやすくなる。部屋ごとの温度差の理想は3度以内、最大でも7度以内にはおさめたい。

住まい方(2)……加湿器を活用する

室温は同じでも、湿度が上がると体感温度は高くなるもの。そこで、乾燥しがちな冬場には加湿器を活用するといい。湿度を上げることは、冬の「かくれ脱水」を防ぐことにもつながるそうだ。

血栓をつくりにくくし、感染症の予防にもなる。加湿器がない場合は、湿度計が60%を超える湿度過剰にならないよう気をつけながら、洗濯物や濡れタオルを干すのも効果的。

住まい方(3)……窓側に暖房器具を置く

暖房をつけているのに足元がひんやりするとしたら、暖められた室内の空気が窓に触れることで冷たい気流になってしまう「コールドドラフト現象」が起きている可能性もある。

足元を暖かくするためには窓交換が効果的だが、難しい場合は窓際に暖房器具を置くといい。窓際に置けばヒーターからでる上昇気流が窓からの冷気を押しとどめ、暖房効果を上げることができるからだ。

開放式の石油ストーブやファンヒーターのように空気を汚す暖房器具より、電気を熱エネルギーに変えて暖めるパネルヒーターなどのほうがよいそうだ。

住まい方(4)……隙間風対策

できる限り厚手の素材のカーテンを選び、床につく丈にすることも重要。コールドドラフト現象による冷気の流れを押しとどめ、室内の熱を逃がしにくくなるからだ。どうしてもカーテンと床の間に隙間ができてしまう場合は、クッションで埋めてもOK。

住まい方(5)……羽毛布団で&マスクをして寝る

掛け布団が重くなりがちな冬には、重要な生理現象である寝返りが難しくなる。そこで、軽く暖かい羽毛布団で寝返りが打ちやすい環境を整えたい。

また肺に冷たい空気が入ることで自律神経の交感神経が活発化し、眠りを妨げることになるため、マスクをして寝れば多少は冷たさが和らぐかもしれないという。

住まい方(6)……浴室、脱衣所、トイレは使用前に暖める

暖かい居室から脱衣所や浴室など、室温が下がりやすい場所に移動すると、血管が収縮しやすくなる。いわゆるヒートショックの危険があるのだ。そこで、浴室、脱衣所、トイレを使用前に暖めることが大切なポイントになる。

住まい方(7)……適度に重ね着をして、首元を温める

一枚なにかを羽織るだけで体感温度を上げることができるので、廊下に出るときなど室温が明らかに下がる場所へ移動する際には、さっと羽織ることを習慣にするべき。また、特に寒い家に住む人は、首元を冷やさないようにすることも大切であるようだ。

* * *

今後は寒暖差がさらに大きくなる季節。新型コロナやインフルエンザのリスクもあるだけに、これら7項目を取り入れて体調管理を心がけたい。

『室温を2度上げると健康寿命は4歳のびる』

笹井恵里子 著
光文社新書

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文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)『書評の仕事』 (ワニブックスPLUS新書)などがある。新刊は『「書くのが苦手」な人のための文章術』( ‎PHP研究所)。2020年6月、「日本一ネット」から「書評執筆数日本一」と認定される。

 

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