文/満尾正
新型コロナウイルス感染症など、さまざまな病気に負けないための「免疫力」は、日々の食事や生活習慣の改善によって、大幅に高めることができるそうです。しかし、巷に溢れる健康や免疫力に関する知識は刻一刻とアップデートされ、間違った情報や古びてしまったものも少なくありません。コロナ禍の今、本当に現代人が知っておくべき知識とは何でしょうか。著書『世界最新の医療データが示す最強の食事術 ハーバードの栄養学に学ぶ究極の「健康資産」の作り方』が話題の満尾正医師が解説します。
同じ50代の男性が3人いたとして、みんなが同じ健康状態ということはありません。たとえ、会社の健康診断の結果は似たり寄ったりであっても、詳しく調べると人によって大きな違いが見えてきます。
ましてや、10年後、20年後には、相当の差が出ているはずです。
みなさんは、「免疫力を上げ、パンデミックにも負けず、健康で長生きできる体を手に入れたい」という共通の目的を持っています。つまり、登山で言えば登りたい山は同じだということです。ですから、地図も同じものを手にします。同じ地図を見ながら同じ山頂を目指しているのに、そこへの到達スピードが違ったり、あるいは到達できなかったりするのは、スタート位置が違うからです。
もっとも、別々の人間ですから、スタート位置が違うのは当たり前です。大事なことは、自分が今どこに立っているかをしっかりつかむこと。あなたは、自分が「健康地図」のどこに位置しているか本当に理解しているでしょうか。
先日、ある企業の経営者から、社員数名の検査の依頼がありました。受診者のなかに20代の男性がおり、私は「彼はまだ、必要ないんじゃないかな」と思っていました。ところが、骨密度の検査で、その男性の数値がいちばん悪かったのです。
普通、20代だと骨密度は100%以上を示すのですが、彼は70%しかありませんでした。この数値は、「骨粗鬆症の疑い」という状態を意味しています。
気をつけて見ていると、たしかに調子が悪そうです。私が検査結果を伝えていてもぼーっとして反応が鈍く、疲れた感じを受けました。詳しく話を聞くと、その食生活はメチャクチャでした。
一人暮らしのため、食べ物はほとんどコンビニで調達し、お菓子とご飯の区別がつかない状態。会社にはカップ麺が置いてあり、空腹を感じたらそれを食べ、家ではコーラとスナック菓子を食べて夕食代わりにしているということです。
彼は、私が説明するまで、食事については、まったく深刻には考えていないようでした。自分の体の中で起きている変化が、よくわかっていないのです。
あなたも、今のところとくに大きな不調は感じていないかも知れません。だから、自分の体はこのままシワが増えたり筋力が落ちたりと、緩やかに老いていくのだろうと考えているのかも知れません。
しかし、それは、健康な体を維持できればの話。誰もがそのように平和に老いていけるとは限りません。
満尾正(みつお・ただし)/米国先端医療学会理事、医学博士。1957年横浜生まれ。北海道大学医学部卒業後、内科研修を経て杏林大学救急医学教室講師として救急救命医療の現場などに従事。ハーバード大学外科代謝栄養研究室研究員、救急振興財団東京研修所主任教授を経た後、日本で初めてのアンチエイジング専門病院「満尾クリニック」を開設。米国アンチエイジング学会(A4M)認定医(日本人初)、米国先端医療学会(ACAM)キレーション治療認定医の資格を併せ持つ、唯一の日本人医師。著書に『世界最新の医療データが示す最強の食事術 ハーバードの栄養学に学ぶ「究極の健康資産」の作り方』(小学館)など。