文/満尾正
新型コロナウイルス感染症など、さまざまな病気に負けないための「免疫力」は、日々の食事や生活習慣の改善によって、大幅に高めることができるそうです。しかし、巷に溢れる健康や免疫力に関する知識は刻一刻とアップデートされ、間違った情報や古びてしまったものも少なくありません。コロナ禍の今、本当に現代人が知っておくべき知識とは何でしょうか。著書『世界最新の医療データが示す最強の食事術 ハーバードの栄養学に学ぶ究極の「健康資産」の作り方』が話題の満尾正医師が解説します。
上のグラフ(図2)は、日本におけるインフルエンザの死亡者数の推移です。1950~60年代は、かなりの死者を出しています。1980年代からずいぶん落ち着いていたのが、まただんだんと増えてきているのがわかるでしょう。ワクチンも、タミフルのような治療薬も使われているのに増えているのです。
さらに不気味なことに、こうした上昇カーブと重なるように、がん、糖尿病、不妊症、自閉症なども増えています。
つまり、新型コロナのようなウイルスだけが私たちの敵なのではなく、今後もありとあらゆる病気が出てきます。たとえ、がんの治療法が確立されたとしても、それに変わるなにかが現れることでしょう。
そういう状況にあって、まさに「最後は個々人の免疫力にかかっている」のです。
その免疫力は、ストレスがかかるといとも簡単に低下します。ですから、免疫力を最高の状態に保つには、そもそもの日々の暮らし方から考えていく必要があります。
これからの時代の健康管理、免疫力の増強のためには、一人ひとりが自分にあった健康法を試行錯誤しながらでも探し続けることが必要です。積極的な予防医療でもある抗加齢医療では、健康づくりのために欠かせない3本柱を重視します。
それは「心の持ち方」「食事の内容」「適度な運動」です。
現代は物に溢れた、まさに唯物的な世の中ですが、いちばん大切なものは目に見えない心の世界であることは、誰でも感じていることです。
しかし、私たちの日常は、目の前の忙しさに振り回されてしまい、まさに読んで字のごとく、心を亡くしているのが現実ではないでしょうか。心の持ち方をおろそかにすれば、おのずから食事も乱れて、結果として体も動かなくなってしまいます。
さらに現代は情報過多社会。SNSなどの普及により、これまでになく自分と他人とを比較しやすくなってしまったことによって「心」の疲弊が生まれやすい環境になっています。
これでは健康管理はできません。まずは心のバランスを整え、食事を正し、適度な運動を日常生活に取り入れることが健康管理の始まりです。
実は情報と食の内容は似ているところがあります。どちらも適切に補給しなければ、健全な社会生活を維持することは難しくなります。
一方で、必要なものでも摂りすぎることは、心や体の不調を招くことになります。言うまでもなく、心身に悪影響をもたらすものを摂ることは、心身の健康状態を崩壊させてしまいます。
毎日の食べ物を大切に考えていくことは、みなさんの人生を根本から素晴らしいものにする、とても大切な、知的な行動です。このことをぜひとも理解されて、明日の健康づくりのために、今日の食事を選ぶようにしてください。
満尾正(みつお・ただし)/米国先端医療学会理事、医学博士。1957年横浜生まれ。北海道大学医学部卒業後、内科研修を経て杏林大学救急医学教室講師として救急救命医療の現場などに従事。ハーバード大学外科代謝栄養研究室研究員、救急振興財団東京研修所主任教授を経た後、日本で初めてのアンチエイジング専門病院「満尾クリニック」を開設。米国アンチエイジング学会(A4M)認定医(日本人初)、米国先端医療学会(ACAM)キレーション治療認定医の資格を併せ持つ、唯一の日本人医師。著書に『世界最新の医療データが示す最強の食事術 ハーバードの栄養学に学ぶ「究極の健康資産」の作り方』(小学館)など。