疲労回復に効果的なスタミナ野菜といえばニラです。東アジアが原産ですが、『古事記』や『万葉集』にもその名が見られ、日本でも古くから活用されてきました。
ただし、食用として利用されるようになったのは戦後のことで、戦前はおもに薬草として用いられていたといいます。江戸時代には、腹痛や下痢の治療薬として、雑炊や味噌汁に加えて食すこともあったそうです。
今回紹介する江戸レシピは、体に良いニラをたっぷり使った「ニラ雑炊」。江戸時代に書かれた米料理の専門書『名飯部類』からのご紹介です。
『名飯部類』とは、いわゆる“百珍物”と呼ばれる料理本のひとつで、本連載の第1回でご紹介した『豆腐百珍』の類似本。『豆腐百珍』は“豆腐”をテーマに100種類の料理を紹介していましたが、『名飯部類』では“米”をテーマに米料理が150種類以上紹介しています。
では、ニラ雑炊を実際に作ってみましょう。
■「ニラ雑炊」の作り方
◎材料
ニラ 1/2把
味噌汁(具なし) 1杯分
ごはん 1杯
七味唐辛子 適量
※原本では、薬味には陳皮の粉末、唐辛子の粉、おろし柚子などを添えるとありますが、今回は七味唐辛子で代用しました。
ニラ好きにはたまらない1杯ですが、風味が強いので、好みが分かれるところではあるでしょう。
しかし、ニラはカロテンやビタミンB2、ビタミンCなど栄養豊富で、血行促進や胃腸の機能向上にも効果的なので、「ニラ雑炊」は薬膳としてもおすすめです。
これから寒い季節に入っていきます。年末に向けて、お酒や宴会も増えてくることでしょう。風邪のひきはじめや、胃腸が弱っている時、二日酔いの時にこそ、このニラ雑炊をぜひお試しください。
【参考文献】
『名飯部類 原本現代訳』(原著・杉野権兵衛 訳・福田浩、島崎とみ子/教育社新書)
『図説 江戸時代 食生活事典』(編集・日本風俗史学会 編集代表・篠田統、川上行蔵/雄山閣)
『からだにおいしい 野菜の便利帳』(監修・板木利隆/高橋書店)
※分量や細かい作り方は原本に記載されていないため、筆者が作った方法でご紹介しています。
文/小野寺佑子
撮影/五十嵐美弥