酒飲みの聖地、「角打ち(かくうち)」。店内での立ち飲みが基本なので、そのイメージはある程度決まっているかもしれない。
しかし実際には、旧来のスタイルに縛られることなく進化を遂げている店も多い。
そこで今回は、角打ちの魅力を網羅した書籍『全国名物立ち飲み酒屋特選 男の聖地 角打ちに憩う』から、「個性派角打ち」に焦点を当てて、東西の名店を紹介していこう。
■1:MARU(東京・八丁堀)
サルサやサンバがBGMとして流れるなか、メキシコ系ハーフ美女がオーダーをとり、酒や料理を運んでくれる。そんな、角打ちの常識を一掃したかのような店が「MARU」だ。
明治12年創業で地元からも親しまれてきた老舗の酒屋に、4代目にあたる現店主が新たな風を吹き込んだ店である。ワインと生ハムを楽しむもよし、月替わりのおすすめ日本酒とともに新鮮な刺身をつまむもよし、思い思いに利用できる。
【MARU】
住所:東京都中央区八丁堀3-22-10
電話:03-3551-4538
営業時間:16時半〜23時
土・日・祝定休
■2:モリタヤ酒店(東京・南千住)
3代目の店主は、10年ほど前に日曜大工で倉庫を改装し、「角打モリタヤ」という専用の小部屋をつくってしまったという人物。
そこに山登り、自転車、バイク、ヨット、写真、酒など、自分の書身を全部詰め込んだというだけあって、店内は遊び心でいっぱいだ。
たとえ一見さんがひとりで訪れたとしても、抵抗なく溶け込めるような気軽さがあるのも魅力的だ。
【モリタヤ酒店】
住所:東京都荒川区南千住6-17-5
電話:03-3805-2805
営業時間:10時〜21時半(日祝〜21時)
不定休
■3:加島屋酒店(東京・神田須田町)
加島屋酒店がある界隈は、かつての住居表示が「神田・連雀町」。明治から続く老舗の蕎麦屋、料亭などが点在する風情ある一角。池波正太郎が足した街としても知られている。
建て替えをしたため昔の面影こそないものの、創業80年の老舗である。池波正太郎のエッセイに周辺の風景が登場することもあり、文学ファンが集っては酒を酌み交わす。
バイキング形式で楽しめるつまみのうまさも、人気のひとつだ。
【加島屋酒店】
住所:東京都千代田区神田須田町1-15
電話:03-3251-2653
営業時間:17時〜21時半
日・祝定休
■4:ピアさんばし(神戸・和田岬)
一風変わった店名の由来は、神戸港に突き出た和田岬に店があるから。そんなロケーションもあって、常連客の大半は造船関係、電気関係の大企業サラリーマンなのだそうだ。
3代目店主が大切にしているのはピア(桟橋)に接岸している客船のキャビンで立ち飲みしているようなイメージ。その心意気を盛り立てるように、若き4代目のキビキビと店内を動き回る。
【ピアさんばし】
住所:兵庫県神戸市兵庫区笠松通7-3-4
電話:078-671-2690
営業時間:16時半〜20時半(月・金)、〜21時(火・水・木)
土・日・祝定休
■5:森山酒店・ちょこっとBar(長崎市・賑町)
「店のなかでお客さんにちょっとだけでも飲んでもらいたくて、バーに近い雰囲気の店をつくりました」と語るのは、3代目の店主。
「ちょこっと」は長崎弁で「ちょっと」の意味だそうだが、実際にはちょこっとでは帰りたくないほど魅力的だと常連客。
ワインボトルを利用したランプシェードの照明の下、ジャズのBGMをバックに語らえば、たしかに長居をしてしまいそうだ。
【森山酒店・ちょこっとBar】
住所:長崎県長崎市賑町3-9
電話:095-822-4772
営業時間:17時〜21時半
日・祝定休
以上、今回は書籍『男の聖地 角打ちに憩う』から、「個性派角打ち」の東西の名店を5軒ご紹介したが、いかがだろうか?
もしかしたら、角打ちの店にはオーナーの価値観や個性が反映されるのかもしれない。だからこそ、各店の魅力を存分に楽しみたいところだ。
文/印南敦史
【参考図書】
角打ちファン待望の必携書!
全国名物立ち飲み酒屋特選『男の聖地 角打ちに憩う』
(本体700円+税、小学館)
昨今、「立ち飲み」「大衆酒場」など、安く気軽にお酒が飲める店が人気ですが、日本では、古くから”酒屋で立ち飲み”する「角打ち」という文化があります。一見すると普通の酒屋のため、その奥の世界はあまり知られていませんが、酒好き達が隠れ家のように集まり、夜ごと好きな酒を飲んでいる、ちょっとディープなその光景を店の紹介とともに伝えます。
昔ながらの正統派からバル風の新スタイルまで、全国54店舗を紹介。読めば必ず、あなたも行ってみたくなる、今までどこにもなかった本格角打ちガイドブックです。