今回から始まるシリーズ「再現!江戸飯レシピ」。江戸時代の料理本を元に、筆者が当時の料理を再現し、そのレシピをご紹介します。
第1回目のレシピは、『豆腐百珍』の「奇品」部門に掲載されている「味噌漬豆腐」です。
『豆腐百珍』とは、天明二(1782)年に発行された、豆腐料理ばかりを100種類紹介する料理本。大ベストセラーになり、この後、『鯛百珍料理秘密箱』や『万宝料理秘密箱』(玉子百珍)など、いわゆる“百珍物”と呼ばれる類似本が次々と発刊されたそうです。
『豆腐百珍』は、尋常品・通品・佳品・奇品・妙品・絶品と6種類に分類されており、本書の凡例によると、奇品とは「ひと際風変りで誰もが思いもよらない料理」と定義づけられていました。
では、実際に「味噌漬とうふ」を作ってみましょう。分量や細かい作り方は本書に記されていないため、筆者が作った方法でご紹介します。
水切りした豆腐を味噌に漬けて、ひと晩置くだけと、とっても簡単! 少しもったりとした舌触りで、チーズのような味わいになります。日本酒のアテにぴったりの逸品です。
■「味噌漬とうふ」の作り方
◎材料
木綿豆腐 一丁
味噌 約400g
■江戸の味により近づけるなら、「仙台味噌」や「江戸甘味噌」で漬ける
いかがでしょうか? 今回は、自家製味噌(辛口の赤味噌)で漬けこんでみましたが、より当時の味に近づけたいなら、江戸っ子に人気だったという「仙台味噌」、または「江戸甘味噌」で漬けこむのがおすすめです。
「仙台味噌」は、濃厚な風味で辛口の赤味噌。江戸で流行した「仙台味噌」は、仙台藩で作られたものではなく、仙台藩の下屋敷で作られた味噌だったそうです。もともとは藩邸内で食べたり備蓄したりする目的で作り始めたのが、近隣におすそわけしたことから評判となり、販売されるようになったといわれています。
「江戸甘味噌」は、味噌田楽やどじょう汁などでおなじみのこってり甘い味噌です。大豆の風味と麹の甘みが特徴的ですが、米麹をたっぷり使うため高級品だったそうです。
いろいろな味噌で漬けこんでみて、味の違いを比べてみるのもおもしろいかもしれません。
※参考:『料理百珍集』(校註・解説 原田信男/八坂書房)、『江戸料理読本』(著者・松下幸子/ちくま学芸文庫)、『日本ビジュアル生活史 江戸の料理と食生活』(編著者・原田信男/小学館)
文/小野寺佑子
撮影/五十嵐美弥