タン。

今回ご紹介したいのは、富山県の速星というところにある、『お多福』さんの極上ホルモンです。

こちらは夕方4時から店を開けているホルモン料理の専門店。お客さんの誰もが、豚か牛のもつ鍋から始め、ハツやタンの刺身を食べ、そしてカルビやミノを鍋で焼いて楽しんでいます。

私は「エンジン01文化戦略会議」というボランティアグループに参加していて、年1回、全国のどこかでシンポジウムや講座の「オープンカレッジ」を開催しています。昨年の春には、北陸新幹線の開通に合わせて富山で3日間開催したのですが、その際に現地の食いしん坊たちから教わったのがこの店。ただ、その後なかなか出かける機会に恵まれませんでした。

今回、東京から関西へ出かけるのに、あえて北陸経由にして、この『お多福』さんに立ち寄ることにしました。

店はJR高山本線の「速星」駅の目の前にあります。店内に入った瞬間、客はまだ一組というのに、すでにいい匂いが立ち込めていました。むしろ「立ち込める」というよりも「沁みついている」と言ったほうが適切な感じがするお店です。

ハツ。

案内してくれた常連が注文してくれた料理を次々にいただきましたが、どれも目の醒めるような美味しさです。

ホルモンは鮮度が命ですが、そればかりか肉質が極めて良く、しかも仕込みが徹底していて、香りが高くとも、驚くほどに臭みがありません。

なかでも傑作だったのは、ハツとタンの刺身と、カルビとミノをたまねぎと一緒に鍋で炒めて食べる料理。ミノなど、網焼きをしないため、焦げ目がつかず、噛み心地と甘い肉汁が感動的な美味しさでした。

カルビ、ミノ。

今回私はこの店に出かけるために、わざわざ遠回りをしましたが、かの“ミシュランガイド”では「その店に出掛けるために旅をする値打ちがある」というのが、3つ星レストランの定義となっています。それに倣えば、この『お多福』は間違いなく、私にとって3つ星の価値あるお店です。

来たる6月には、「ミシュランガイド富山・石川(金沢)2016特別版」が刊行される予定となっていますが、さてさて、この店は掲載されるでしょうか?

■お多福
住所/富山県富山市婦中町速星4-543
TEL/(076)466-2265
営業時間/16:00~22:00
定休日/日曜日

文/山本益博
料理評論家・落語評論家。1948年、東京生まれ。大学の卒論「桂文楽の世界」がそのまま出版され、評論家としての仕事をスタート。TV「花王名人劇場」(関西テレビ系列)のプロデューサーを務めた後、料理中心の評論活動に入る。

 

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