■3:新政(あらまさ)
――モダンな味の奥に広がる限りない滋味
「感動する日本酒、それが『新政』です。甘口好きも辛口好きも唸らせる奥深い旨みと膨らみがある。革新的で進化し続ける酒です」と話すのは『酒菜家池袋店』の店長・野沢博幸さん(42歳)。
この店と新政酒造との付き合いは長く、新政酒造先代の頃からという。店には、定番生酒である「No.6」や、秋田の酒米の個性を際立たせた「Colors(カラーズ)」シリーズが揃う。さらに限定品の貴醸酒(醸造の際に一部使用する水に代えて日本酒を用いて造る酒。)の『紫八咫』など、なかなか目にすることができない珍しいものもある。
料理は『新政』のモダンな飲み口に合う、コクや甘みが強いものや、『新政』独特の酸味との相乗効果を生む柑橘類、清涼感のある香辛料を用いる。
酒単独でも、料理とともにでも、『新政』の実力を存分に味わえる店である。
【酒菜家 池袋店】
東京都豊島区西池袋1-35-8 2階
電話:03・3590・9560
営業時間:17時~23時30分、日曜・祝日は16時30分~22時30分
定休日:無休(要予約)
アクセス:JR、東武鉄道、西武鉄道、東京メトロ丸ノ内線・有楽町線・副都心線池袋駅西口・北口から徒歩約3分
■4:飛露喜(ひろき)
――透明感のある味に潜む、米の旨み
古今の技法を巧みに織り交ぜた肴と吟味された銘酒の数々。東京・四谷にある『萬屋おかげさん』。店主の神崎康敏さん(50歳)が、開業時から主力酒として思いを込めるのが、福島県会津坂下の酒『飛露喜』(廣木酒造本店)である。
神崎さんがこの店を開く少し前、大きな飲食店のマネージャーを務めていたとき、福島に経営の傾いた小さな蔵を継ごうとする若き情熱家がいると耳にした。平成9年のことである。翌年、その酒の第1号を手に入れ、飲んで驚いた。
「米の旨みがあり、酸が綺麗。吟醸香とも違う瑞々しい生酒の香りがありました」(神崎さん)
それから店に『飛露喜』を欠かさず置くようになる。すると蔵元の廣木健司さんから感謝の手紙が来た。ふたりは同い年。すぐに意気投合し、その交わりは今に至る。
そして平成12年、神崎さんが独立開業。時代は、淡麗辛口全盛から、濃醇旨口へと移り変わっていた。芳醇かつ美しい飲み口の『飛露喜』は瞬く間に評判を呼び、地酒の最高峰に名を連ねるようになった。相前後して『萬屋おかげさん』も酒徒を唸らす見事な料理が話題を呼び、今では東京有数の酒亭とも評される。
神崎さんは、今の『飛露喜』の魅力を次のように語る。
「生酒らしいフレッシュさで評判になった酒ですが、今は、とても落ち着いた、端正な酒になりました。透明感のある美しい飲み口の中に、米味、麹のもつ旨みが潜んでいます。すっと飲めば、誰にでも旨い。しみじみ飲むと、本質的な酒の旨さに触れることができる。味の“核”は、出会ったときから変わっていないんですね」
しみじみと『飛露喜』を傾け、この店の肴の持つ、染みいるような滋味に心をゆだねたい。
【萬屋おかげさん】
東京都新宿区四谷2-10松本館地下1階
電話:03・3355・8100
営業時間:18時~20時(入店)
定休日:日曜、月曜、祝日(完全予約)
アクセス:JR中央線四ツ谷駅四ツ谷出口、東京メトロ丸ノ内線四谷三丁目駅3番出口から、徒歩約8分。
※この記事は『サライ』本誌2017年1月号より転載しました(取材・文/関屋淳子〔あまてらす、酒菜家〕写真/高橋昌嗣〔GORI、あまてらす〕宮地 工〔酒菜家、萬屋おかげさん〕)。年齢・肩書き等の情報は取材時のものです。