■二の酒:大倉本家『大倉 山廃特別純米・備前雄町』(奈良県)
さて、次に「鮎の一夜干し」と合わせたのは、奈良県は香芝市にある蔵元「大倉本家」が醸す『大倉 山廃特別純米・備前雄町』です。以前のサライ.jp連載『今宵の一献』でもご紹介した日本酒『金鼓 濁酒』の蔵元です。
大倉本家は、しっかりとした旨みと酸の出る「山廃仕込み」に昔から力を入れてきた酒蔵です。そこで私が選んだのは、平成24年度に醸造し、それから約4年ほど冷蔵熟成させた『大倉 山廃特別純米』です。
昨今は、山廃仕込みでも新酒の状態で飲まれる機会が多くなっています。しかし、山廃仕込みのお酒は、本来は熟成させることによって、旨みがこなれ、酸も馴染んで、その真価を発揮するように思います。
ましてや今回の『大倉 山廃特別純米』の酒米には、熟成によって旨みが乗ってくる「雄町」を使っていますので、なおさらです。
冷蔵での低温熟成ですから、年数のわりには熟成味は強くはなく、味わい自体はよりやわらかくなっていますので、鮎の風味を消しさることなく、相乗効果が現れることを期待して合わせてみたいと思います。
いざ合わせてみると、面白いことに、4年熟成の山廃特別純米酒よりも、鮎の風味のほうが強く感じられました。原酒ではなく、加水タイプとはいえ、熟成感も出た個性のあるお酒なのですが、その点は予想外でした。
全体としての相性は悪くはありません。ほんの少し、鮎の苦味が引き立つ感じになりましたが、付け合わせの新ジャガとの相性は抜群です。
個性を少し抑えようと考えて、お酒は常温で合わせてみましたが、あるいは「燗」をつけたほうが、逆によかったかも知れません。
さて次は、思い切ってドイツのビール『シュナイダー・ヴァイセ・オリジナル』を合わせてみましょう。