■三の酒:シュナイダー醸造所『シュナイダー・ヴァイセ・オリジナル』(ドイツ)
パリっと香ばしく焼かれた「鮎の一夜干し」に、ビールを合わせてみるのは如何でしょうか。同じ“泡モノ”でも、葡萄を原料とするスパークリング・ワインとは大きく印象も違うはずです。
そこで合わせてみたのはドイツのビール『シュナイダー・ヴァイセ・オリジナル』。1872年バイエルン州ミュンヘンで創業して以来、6世代続く「シュナイダー醸造所」のビールです。
現在は、ミュンヘンから約90km北にあるケルハイムに醸造所は移っています。もとの創業の地はシュナイダー醸造所直営の「ヴァイセス・ブロイハウス」という名のビアレストランになっています。
バイエルン州といえば、原料の半分以上に“小麦”が使われる「ヴァイツエンビール」が有名ですが――シュナイダー醸造所が醸す数種類のビールもすべてヴァイツェンビールです。
一般的な大麦麦芽でつくられるビールよりも軽快でフルーティ、かつスパイシーな個性を持っています。「ヘフェ」と呼ばれる酵母が含まれることで白濁するビールです。
小麦ビールの歴史とともに歩んできたシュナイダー家の創業当時のレシピをそのまま継承する「シュナイダー・ヴァイセ・オリジナル」は、少しローストした小麦麦芽による香ばしさと琥珀色が特徴です。
ほのかな香ばしさが「うるか」を塗って焼いた鮎の香ばしさとうまくマッチすれば良いのですが、さて――。
ヴァイツェン特有の、ほのかなバナナ香が口中に広がり、見た目の色合いのわりにはスッキリした飲み口です。
おや!? これは驚きの相性の良さですよ。
鮎の爽やかな香気と、うるかの苦味に寄り添いながら、優しく包み込む感覚でしょうか。鮎とビールの両方の良いところがちゃんと感じられます。
ビールですから、付け合わせのジャガイモには当然合うにしても、胡麻酢とは稀に見る相性の良さ、といえますね。料理人の間瀬達郎さんも、この相性の良さには驚いていましたが、こういう思いがけない発見は、まこと嬉しくも幸せな瞬間です。その幸福感に、どんどんビールが進み、思わず2本目を開けてしまいました。
* * *
ということで、今回はドイツのヴァイツェンビール「シュナイダー」が、6月のお題料理「鮎の一夜干し」と、意外にも見事な相性の良さを見せました。
最近は、クラフトビールと呼ばれる各所の地ビールをあちこちでよく見かけるようにもなりましたので、いろいろなタイプのビールと合わせて相性を探るのも楽しいかも知れません。ぜひお試しください!
文/藤本一路(ふじもと・いちろ)
酒販店『白菊屋』(大阪高槻市)取締役店長。日本酒・本格焼酎を軸にワインからベルギービールまでを厳選吟味。飲食店にはお酒のメニューのみならず、食材・器・インテリアまでの相談に応じて情報提供を行なっている。
【白菊屋】
■住所:大阪府高槻市柳川町2-3-2
■電話:072-696-0739
■営業時間:9時~20時
■定休日:水曜
■お店のサイト: http://shiragikuya.com/
料理/間瀬達郎(ませ・たつろう)
大阪『堂島雪花菜』店主。高級料亭や東京・銀座の寿司店での修業を経て独立。開店10周年を迎えた『堂島雪花菜』は、自慢の料理と吟味したお酒が愉しめる店として評判が高い。
【堂島雪花菜(どうじまきらず)】
■住所:大阪市北区堂島3-2-8
■電話:06-6450-0203
■営業時間:11時30分~14時、17時30分~22時
■定休日:日曜
■アクセス:地下鉄四ツ橋線西梅田駅から徒歩約7分
構成/佐藤俊一
※ 藤本一路さんが各地の蔵元を訪ね歩いて出会った有名無名の日本酒の中から、季節に合ったおすすめの1本をご紹介する連載「今宵の一献」過去記事はこちらをご覧ください。