このハーモニーを編み出したのは、堀さんの発想の斬新さと、味覚のセンスの良さだろう。ほかにも堀さんは、蕎麦つゆにウニを合わせるなど、他の蕎麦店では味わうことのできない個性の味を、メニューに載せている。
郷土蕎麦というものは、多くの人が「こうしたら美味しい」と工夫した味の中から、万人が納得したものだけが、次の世代へと伝えられた知恵の集積だ。「越前蟹おろしそば」なら、伝えられる可能性がある。ひょっとしたら私は、この日、ひとつの新しい郷土蕎麦が生まれる、その瞬間に立ち会えたのかもしれない。
「越前蟹おろしそば」がメニューに載るのは、エチゼンガニの漁期の11月6日から3月20日。年により変動があるので、詳しくは要問い合わせ。1500円(限定20食)
森六
住所:福井県越前市粟田部26-20
TEL:0778-42-0216
営業時間:11時~17時
定休日:毎週月曜日(月曜が祝祭日の場合は営業)、第3火曜日
文・写真/片山虎之介
世界初の蕎麦専門のWebマガジン『蕎麦Web』(http://sobaweb.com/)編集長。蕎麦好きのカメラマンであり、ライター。伝統食文化研究家。著書に『真打ち登場! 霧下蕎麦』『正統の蕎麦屋』『不老長寿の ダッタン蕎麦』(小学館)、『ダッタン蕎麦百科』(柴田書店)、『蕎麦屋の常識・非常識』(朝日新聞出版)などがある。