文/小坂眞吾(サライ編集長)
早くも日本酒の新酒が出回りはじめ、左党には嬉しい季節となりました。
私も左党のはしくれとして、車で20分ほどの『籠屋秋元酒店』(東京・狛江)にほぼ週一で通っております。ここのスタッフは若者がほとんどですが、みんな日本酒が大好き。新たに入荷した酒はほとんど飲んでいるので、相談しても話が早い。好みの味や、合わせたい料理を伝えると、必ずオススメを数本挙げてくれます。
昨今の日本酒は、味の幅が広がると同時に、レベルも上がっているので、端麗でも芳醇でも、辛口でも甘口でも、何を飲んでもそこそこおいしい。火入れの技術も進んで、生でなくてもフレッシュ感を保てる。逆に言うと、自分の好きなこの1本、というのが見つけにくい状況です。
我が身を振り返っても、数年前は、自分の中で好きな銘柄の順位が明確にありましたし、火入れしてない生酒が一番、という確信がありましたが、いまは順位が付けられず、なにやらもやもやした状態。
そんなとき、頼りになるのが、酒販店の熱意あるスタッフなんです。
ちなみに『籠屋秋元酒店』で今までに私のしたリクエストの例を挙げると、「しめ鯖に合う酒」「イナダの刺身に合う酒」「カワハギの鍋に合う酒」等々。要するに、釣りの帰りに立ち寄って、その日の釣果に合うものを選んでもらうことが多いのですが、魚種が変わると、違う酒を推薦してくれて、しかもハズレがありません。
こういうお店が隣町にあって、幸せだなあ、と感じる今日このごろです。
ちなみにサライ1月号の日本酒特集の「酒販店リスト」には、この『籠屋秋元酒店』をはじめ、全国のおすすめ酒販店を多数掲載しています。ぜひご覧いただき、皆さんのお住まいの地域に行きつけの酒販店を見つけてください。
■酒&釣り好き編集長の個人的オススメ
さて、サライ編集部では毎年、日本酒特集の編集作業が終わると、たくさんの一升瓶が編集部の冷蔵庫に並びます。それを毎晩、少しずつたしなむのが、恒例のお楽しみになっているのですが、今回の特集で紹介したなかで、私の好みの1本は福岡県・若波酒造の『若波 純米酒』でした。
杯から立ち上がる香りは、ごくごく控えめ。それでいて口に含むと、鼻に抜ける香りはキリッとした輪郭。味わいは、お米らしい優しい甘みのあとを酸が引き締め、ごくほのかな渋みが余韻としてフェードアウトしていく。香り・甘み・酸・渋み。口に含んだ瞬間から、余韻が消え去るまでに起承転結があり、まるで一幕の舞台を見ているよう。いまの私には理想と思える1本です。(小坂の個人的感想です)
合わせる料理としてまず浮かんだのが、脂ののったしめ鯖。青魚系ではほかに鰺刺し、鰹たたきなど、生姜を薬味とする食材がよく合いそうです。キレがいいので、天麩羅にもイケるかも。天麩羅に合う日本酒というのは、ありそうで意外に見つからず、酸の強い白ワインを合わせることが多いのですが、『若波』には期待が持てます。(あくまでも、小坂の個人的感想です)
これで1升2700円(税込み)はお買い得。でも、行きつけの酒販店(@狛江)では見かけないんですよねえ。
【籠屋秋元酒店】
■所在地/東京都狛江市駒井町3-34-3
■電話/03-3480-8931 (電話受付は19:00まで)
■営業時間/9:00~20:00(日曜・祝日は10:00~)
■休業日/月曜日
http://www.houzan.com/
【若波 純米酒】(福岡県・若波酒造)
1.8リットル、2700円(税込)
問い合わせ先/0944-88-1225(若波酒造)
http://wakanami.jimdo.com/
※「日本酒」と「蟹」を特集した『サライ』1月号の詳細は下記よりご覧下さい。試し読みもできます!
https://serai.jp/news/120080