文/鈴木拓也

和菓子好きであれば、「いつかは自分で和菓子を作ってみたい」と思うもの。

しかし、そのハードルは高そう。特に一から作るあんこの菓子は、「素人では難しい」と臆してしまうかもしれない。

そんな心のハードルを押し下げてくれる1冊が刊行された。書名は『本格あんこが作れる本 だれでもできる、和菓子屋の味』(世界文化社 https://www.sekaibunka.com/book/exec/cs/24306.html)。和菓子職人で「菓匠大須賀」の店主である、大須賀麻由美さんの初めての著書だ。

本書は、大豆、金時豆、大福(おおふく)豆、白花豆、紫花豆を素材とした、各種あんこの作り方を網羅したガイドブック。豊富な写真と解説で、初心者にもわかりやすい内容となっている。今回は、その一部を紹介してみよう。

鍋と圧力鍋で時短で作る粒あん

「本格あんこ」は、小豆の粒あんだと出来上がるまで一両日かかる。これは2回目の蜜漬けで半日置くためだが、何度も「びっくり水」を加える下煮から始まって、最後の練り作業へと至る実作業だけでも、およそ90分要する。

他方、時短で作れる小豆あんのレシピも何通りか記されている。その1つ、鍋と圧力鍋を使って全工程が1時間で終わる方法を以下に取り上げる。仕事などで忙しく、少しでも時間を節約したいという方は、まずこちらの作り方からスタートしてみるといいだろう。

【材料(作りやすい分量)】
・小豆……200g
・砂糖……170g

【作り方(工程写真は割愛)】
1. 小豆を流水で洗い、ザルにあける。
2. 鍋に小豆を入れて、ひたひたになるくらいまで水を注ぐ。強火にかける。沸騰してきたら、中~強火にする。
3. 煮た小豆をザルにあけて煮汁を切る。
4. 圧力鍋に小豆と水700mlを入れ、蓋をして中火にかける。しゅんしゅんと湯気が立ってきたら弱火にして、そのまま7分かける。
5. 火を止めて、圧力を抜いて5分置く。流水を1分かけて急冷し、圧が抜けたのを確認してから蓋を開け、小豆を取り出し水気をきる。
6. 小豆を圧力鍋に戻し、水少々と砂糖半量を加えて、中~強火にかけて煮る。
7. 5分経ったら蓋を開け、残りの砂糖を加え、さらに中~強火にかけて、ほどよく水分が飛ぶまでへらで練って出来上がり。

完成した粒あん(本書87pより)

粒あんの甘さにほっこりする「あんバターサンド」

本書には、手作りのあんこを活用したスイーツレシピも、いくつか掲載されている。その1つが、あんこをたっぷりはさんだシンプルで甘い菓子パン。以下の要領で作る。

【材料】
・バンズなどお好みの丸型パン
・粒あん……適量
・バター(有塩)……適量

【作り方】
パンに切れ目を入れ、粒あん適量をはさみ、5mmの厚さに切ったバターをのせる。粒あんとバターの比率は2対1くらいがおすすめ。

完成したあんバターサンド(本書30pより)

* * *

大須賀さんは、「和菓子屋さんのあんこは時間と手間がかかりますが、その過程ひとつひとつが美味しさにつながっています」と説く。今度の休日は、本書を見ながら本格的なあんこ作りにチャレンジしてみるのも一興。今まで体験しなかった、おいしい世界が開けるはずである。

【今日のおいしい1冊】
『本格あんこが作れる本 だれでもできる、和菓子屋の味』

大須賀麻由美著
定価1980円
世界文化社

文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライターとなる。趣味は神社仏閣・秘境めぐりで、撮った写真をInstagram(https://www.instagram.com/happysuzuki/)に掲載している。

 

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