玄関の正面に季節ごとに模様替えをする大屏風が立つ。写真は幕末の狩野派は によるもの。右の几帳は加賀友禅。

老舗料亭の醍醐味を感じる滞在

金沢城の東を流れる浅野川界隈。近くには茶屋街があり、かつては煌びやかな花街文化が花開いた。明治23年(1890)創業の『金城樓(きんじょうろう)』はそんな加賀百万石の粋と雅を継承する料亭旅館である。

広い玄関を抜けると、圧倒的な存在感を放つ大屏風が客を迎える。前田対馬守の子孫の屋敷を引き継ぐ建物は、随所に日本建築の様式美が宿る。また目を奪われるのが旧前田対馬守庭園。数々の灯籠が配される中、槙の大樹が枝を伸ばし、豊臣秀吉が愛でたという太閤七石のひとつ、不二石が鎮座する。

客室は設えの異なる全6室で、香り良い檜風呂付きなどがある。旅装を解けば、和の空間の懐かしさに心も和むようだ。

「月の間」の客室。12.5畳の本間と次の間、坪庭に面する広縁付き。
夕食のコースの一品である治部。合鴨と団子、すだれ麩 、菜の花、海老芋など。山葵を添えるのも治部の特徴のひとつ。蒔絵がある輪島塗の、見込みが浅い治部椀に盛られる。

夕食は伝統的な加賀会席料理。先付から始まり椀物やお造り、焼きものなどが続き、郷土料理の治部が供される。治部煮とも呼ばれ、鴨肉に小麦粉をまぶし、金沢特産のすだれ麩 、青菜や海老芋などとともに醤油味の出汁で煮立てたもの。さらりと上品なとろみと甘さ、肉の旨みが口に広がり、洗練された老舗料亭の味が伝わる。

金城樓

風格のある門構え。

石川県金沢市橋場町2-23
電話:076・221・8188
チェックイン16時、同アウト11時
料金:1泊2食付きひとり4万9500円~ 6室。
交通:JR金沢駅から城下まち金沢周遊バス右回りルート約11分、橋場町(金城樓前)下車

取材・文/関屋淳子 撮影/藤田修平

※この記事は『サライ』本誌2024年4月号より転載しました。

『サライ』2024年4月号の特集第2部は『芸術建築として「国宝の城」を愛でる』。

 

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