急ぎ足の観光客だけでなく、地元の「みやこ人」たちからもこよなく愛される京都の「おうどん」。出汁や麺、具材など個性豊かなメニューの数々と、その美味しさの秘訣を紹介する。

白出汁の風味が個性的なおばんざい店の締めの品

太郎屋(焼きうどん)

「焼うどん」700円。豚肉、イカゲソ、しめじ、キャベツを具材に紅生姜を添える。麺は具材の旨味を含んで濃厚な味わいに。
中華鍋を大きくふって水分をとばしながら焼いていく。白出汁は最後に入れて香りを残す。

開業から30年が経ち、老舗の域に達した『太郎屋』は、地元の人からも観光客からも愛される人気の飲食店。季節のおばんざいをあれこれ味わい、常連客の多くが締めとして注文するのが「焼うどん」だ。

ちなみに焼きうどんは、昭和25年頃、町の食堂などで焼きそばの変化形として登場したといわれ、北から南まで全国で一挙に広まったそうだ。

一般的にはソース味だが、ここでは白出汁(出汁に薄口醤油やみりんなどを加えて調味)と塩胡椒で味つけ。中華鍋で豚肉、イカゲソ、野菜、水でほぐしたうどんの順に炒め、味を調える。

「3月に春キャベツを使うときは、仕上げる直前に入れて香りや食感を残します。出汁で味をつけますが、案外しっかりした味だから、お酒にも合うんです」と話すのは杉本瑠衣子さん。母の雪枝さん、姉の悠子さんとともに忙しい店を切り盛りする。

しっとりしてなめらかなうどんに、豚肉やイカ、キャベツの旨味がたっぷり入る。確かに、また酒がほしくなる味わいだ。

手前右から「きんぴら」450円、「茄子にしん」600円。奥「蕗の山椒煮」600円。日本酒550円〜。
四条烏丸からもすぐの路地。風情ある町家に明かりが灯(とも)る。 

京都市中京区新町通四条上ル東入ル観音堂町473
電話:075・213・3987
営業時間:17時~22時(最終注文)
定休日:日曜、祝日
交通:京都市営地下鉄烏丸線四条駅、阪急京都線烏丸駅より徒歩約4分

 

取材・文/中井シノブ 撮影/高嶋克郎、竹中稔彦
※この記事は『サライ』2022年3月号別冊付録より転載しました。

 

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