取材・文/ふじのあやこ
家族との関係を娘目線で振り返る本連載。幼少期、思春期を経て、親に感じていた気持ちを探ります。(~その1~はコチラ)
今回お話を伺ったのは、京都府内で旦那さまと子どもとの3人暮らしをしている依乃さん(仮名・38歳)。滋賀県出身で、母親と3歳下に弟のいる3人家族。父親は小学校のときに離婚して以来一度も会っていない状態でした。母親は機嫌が悪くなると弟にあたるようになり、それを阻止するためにいつも母親の機嫌をとっていたとか。
「私は子どもの頃から母親の顔色ばかりをうかがっているような子で、弟はハッキリと思ったことを言うタイプ。母親はあからさまに私だけを可愛がるようになり、私は母親の機嫌をとることで弟が深く傷つかないように守っているつもりでした。就職してからも実家を離れなかったのは母親の意向もありましたが、母と弟を家に2人きりにしたくなかったんです。完全に2人の仲がこじれないように必死で間に入っていました」
新居に2時間かけて毎週末に遊びに来る母親
弟さんは高校を卒業後に独立して、知り合いがいるという関東に行ってしまったとか。母親には行き先も一切告げなかったそうですが、依乃さんとは独立後も頻繁に連絡をとり続けていました。実は弟が独立するときに一緒に家を出ることを誘われていたと言います。
「弟は私が実家に居続ける理由が自分だとわかっていたのか、家を出る前に私に一緒に出ようと誘ってきました。一緒に東京に行こうということではなく、一緒に母親を捨てようということなんだと思います。誘われたときは素直に嬉しかったし、大きなきっかけだと思いました。
でも、結果はできませんでした。弟は1人でも生きていけるという安心感がありましたが、母親は1人にすると何をしでかすかわからない。私のほうが母親のような気持ちになってしまっていたんだと思います」
結婚がきっかけとなり25歳で実家を離れることができますが、車で2時間弱の距離ながら週に1~2度は実家と新居を往復していたとか。
「結婚については母は本当に喜んでくれました。相手は職場の上司で相手の家が裕福だったことも関係あるかもしれませんが……(苦笑)。
しかし、問題は別々に暮らし始めてからすぐに起こりました。最初は新居を見に来るという理由で母が家に来たんですが、それが毎週のように続いて。仕事のない週末は私たちの家で過ごすといった感じです。夫はもちろんあまりいい顔はしませんでしたよ。私はさすがに毎週末に嫁の母親がいたら家で気が休まらないと思い、夫に母が少し情緒不安定気味だということを伝えて、週末の度にしばらく私のほうから行くようにしました。1か月目には毎週、2か月目には隔週といった感じで減らしていったんですが、2週空いたときには電話で『お母さんのほうから行く』と言われてしまって。さらには『最近目が見えにくいから明るいうちに行くわね』と事故を起こすかもしれないというようなことを匂わされました……。そうなったら私のほうから行くしかないですよね……」
【父と再会したことが裏切り行為となり、母はいなくなった。次ページに続きます】