水墨画を読み解くキーワードは“風”!「水墨の風 長谷川等伯と雪舟」展

取材・文/池田充枝

水墨画は、墨一色の濃淡によって対象を描写する東洋独自の絵画です。中国・唐代に生まれ、宋代に急速に発展しました。日本には鎌倉時代に伝来し、室町時代に禅宗寺院を中心に発達しました。

雪舟・画、景徐周麟・賛「破墨山水図」〔室町時代 出光美術館蔵〕

室町時代の禅宗寺院では、詩画軸をはじめ花鳥、山水、仏画など多様な水墨画が描かれました。とくに室町時代を代表する水墨画家、雪舟が明に渡って得た力強い水墨表現は、後の画家たちに大きな影響を与えました。

桃山時代は日本独自の水墨表現が飛躍的に発展した時代です。そのなかでも重要な画家のひとりが長谷川等伯(はせがわ・とうはく)です。等伯にみられる湿潤な空気感と微妙な光の演出、より身近な事物を対象に描くなど、中国の伝統に則りながらも日本独自の感性に寄り添った表現は、日本の水墨画に革新をもたらしました。

近世に入ると水墨表現は更に多様な展開をみせていきます。狩野派は雪舟スタイルを基盤にすることで、画壇の中心としての位置を確固たるものとしました。また、江戸中期になると、中国から“かすれ”というまったく新しい水墨表現を駆使する「文人画」が新たに紹介され、池大雅、浦上玉堂らの個性的な文人画家を生み出しました。

*  *  *

そんな水墨画の名品を一堂に集めて、日本における水墨画の展開を総覧できる展覧会「水墨の風 長谷川等伯と雪舟」が、東京の出光美術館で開かれています(~2017年7月17日まで)。

本展は、出光美術館が所蔵する雪舟、等伯はじめ、池大雅、田能村竹田、浦上玉堂ら日本の水墨画の名品に併せて中国の玉澗、牧谿ら中国の水墨画の名品を紹介し、時代の変遷とともに多様化する水墨画の画風、遺風、新風を読み解きます。

長谷川等伯「松に鴉・柳に白鷺図屏風」(右隻)〔桃山時代 出光美術館蔵〕

長谷川等伯「松に鴉・柳に白鷺図屏風」(左隻)〔桃山時代 出光美術館蔵〕

 

本展の見どころを、出光佐三記念美術館学芸員の田中伝さんにうかがいました。

「東洋独自の絵画表現である水墨画。本展では、その魅力を“風”をキーワードに迫っていきます。

“風”は「画風」「遺風」といった言葉からもわかるとおり、「流儀」や「様式」といった意味も含んでいます。今回は雪舟の描いた「破墨山水図(はぼくさんすいず)」、そして長谷川等伯の「松に鴉・柳に白鷺図」を軸に、日本の水墨画が、いかなる遺風にならい、そしてどのような新風を興したのかを見ていきたいと思います。

とくに水墨画界のスーパースターである雪舟は、中国・明に渡って水墨表現をダイレクトに学んだひとりです。彼が中国で魅せられたのは、当時の日本で流行っていた繊細な画風とは真逆の、大胆で荒っぽく、筆に勢いのある画風でした。帰国後は弟子や他派の画家からも作風を模倣され、”雪舟ブランド”を確立。その名を後世にまで轟かせることとなります。

そして雪舟の五代目を名乗り、水墨を突き詰めたのが長谷川等伯です。湿潤な空気感と何ともいえぬ情感を持つ、日本人の心に響く独自の水墨表現を誕生させました。

他にもこのふたりの画風に大きな影響を与えた中国絵画をはじめとする水墨画の数々を展示し、伝統を重んじつつさらなる飛躍を見せた画業に迫ります」

ぜひ会場で、彼らの興した“水墨の風”を感じてみてください。

【展覧会情報】
『水墨の風 長谷川等伯と雪舟』

■会期:2017年6月10日(土)~7月17日(月・祝)期間中一部展示替えあり
■会場:出光美術館
http://idemitsu-museum.or.jp/
■住所:東京都千代田区丸の内3-1-1 帝劇ビル9階(出光専用エレベーター使用)
■電話番号:03・5777・8600(ハローダイヤル)
■開館時間:10時から17時まで、金曜日は19時まで(入館は閉館30分前まで)
■休館日:月曜日(ただし7月17日は開館)

取材・文/池田充枝

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