文/堀けいこ

史上最も有名な国家的リーダーのひとりとされるローマ帝国のジュリアス・シーザーと古代エジプトの美貌の女王クレオパトラの物語を題材にしたオペラがヘンデルの『ジュリオ・チェーザレ』。絢爛たる歴史スペクタクルが展開する大作曲家の最高傑作が、新国立劇場オペラ2022/2023シーズン開幕作品として上演される。壮大にして洒脱なバロック・オペラが、音楽ファン、舞台ファンはもちろん、歴史好きの心をも躍らせるに違いない。

パリ・オペラ座公演より Photo: Agathe Poupeney

「賽は投げられた」「ブルータスお前もか」――いずれも、古代ローマ時代の政治家であり軍人、文筆家でもあったシーザーが言ったとされる、今に伝わる言い回しだ。前者は後戻りのできない決断をした際に、後者は親しい者の意外な面を観たときに使われる。ちなみに、ジュリアス・シーザー(JULIUS CAESAR)は英語読み。ローマ式のユリウス・カエサルという呼び方のほうがしっくりくるという歴史好きは多いかもしれない。そして、ヘンデルのオペラのタイトルとなっている『ジュリオ・チェーザレ』はイタリア語読みだ。

バッハと並び、後期バロック音楽の第一人者であるドイツの作曲家ヘンデルは、初めはイタリアで、後半生はイギリスでヒット・メーカーとして活躍した。そんな彼が、40歳を目前にした脂の乗りきったロンドン時代に書いた、イタリア語によるオペラ『ジュリオ・チェーザレ』が、10月2日から、新国立劇場で上演される。

パリ・オペラ座公演より Photo: Agathe Poupeney

『ジュリオ・チェーザレ』は、愛と権力闘争の歴史物語。野心家でリーダーシップに溢れる一方で、情にも色香にも弱いチェーザレ(シーザー)。聡明で勝気、体を張って政局を乗り切りながら一途な恋心も見せるクレオパトラ。クレオパトラと一進一退の権力争いを続ける策略家の弟トロメーオ(プトレマイオス)。さらにトロメーオの側近の剛勇アキッラ(アキレス)といった歴史上有名な人物が次々登場する。オペラ・ファンならずとも興味津々の内容。ことに歴史好きにはたまらないだろう。

バロック・オペラは17世紀から18世紀の欧州各地で隆盛を極めた。中でもヘンデルの『ジュリオ・チェーザレ』は、劇的効果をはらんだ多彩な音楽の美しさや、歌手の妙技を存分に楽しめる、絢爛たるスペクタクルとして人気が高い。今回、同作を新国立劇場で上演するにあたり、演出家として大野和士芸術監督が白羽の矢を立てたのは、フランスのロラン・ペリーだ。

ペリー演出版『ジュリオ・チェーザレ』は2011年パリ・オペラ座ガルニエで初演されたが、舞台を現代エジプトの博物館のバックヤードに設定、巨大な彫像や絵画が次々に現れるというユーモアにあふれた演出が大きな話題を呼んだ。それが日本に登場するのだから期待が膨らむ。

国内外の話題のオペラ歌手が集結する

18世紀のイタリア・オペラでは、男性の主役はカストラートと呼ばれる男性高音歌手によって歌われるのが常だったが、今日では女性のメゾソプラノ、または男性のカウンターテナーによって歌われる。今回の公演のチェーザレには、バロックで特に評価の高いノルウェーのメゾ、マリアンネ・ベアーテ・キーランドの出演が実現した。

そして、指揮にはバロック音楽の世界的な第一人者リナルド・アレッサンドリーニが登場。チェーザレ役のキーランドの出演は、アレッサンドリーニのラブコールで実現したという裏話もあり、バロック音楽のスペシャリスト同士の共演として話題になっている。

その他の出演者も華やか。クレオパトラにはメトロポリタン歌劇場をはじめ世界の歌劇場で活躍するソプラノ森谷真理。トロメーオを歌うのはカウンターテナーとしてやはり世界的に活躍する藤木大地。剛勇アキッラ役は近年日本での活躍も目覚ましいサンクトペテルブルク生まれのバリトン、ヴィタリ・ユシュマノフ。クレオパトラの小姓ニレーノを演じるカウンターテナーの村松稔之は新国立劇場初登場となる。

パリ・オペラ座公演より Photo: Agathe Poupeney

コロナ禍による公演中止から2年半を経てついに開幕

この『ジュリオ・チェー ザレ』の新国立劇場での上演は、実は2020年4月にバロック・オペラシリーズの第1弾として実現するはずだった。大きな注目を集め、チケットも発売早々に完売。新型コロナウイルス感染が拡大し始め、外国人の入国制限が始まる中、招聘キャスト、マエストロ・アレッサンドリーニ、そしてロラン・ペリーら演出スタッフも来日してリハーサルも始まっていた。が、最終的にリハーサル開始後2週間ほどで公演中止の決定が下されることになったという経緯がある。

無念の公演中止から2年半。再会を誓い合ったスタッフ・キャストがほぼ全員再結集。大胆かつ秀逸なロラン・ペリー演出による『ジュリオ・チェーザレ』の舞台の幕が上がろうとしている。まさに、必見必聴の贅沢な公演になるにちがいない。

新国立劇場 2022/2023シーズンオペラ
G.F.ヘンデル『ジュリオ・チェーザレ』
[全3幕/イタリア語上演 日本語及び英語字幕付]
公演日 2022年10月2日(日)〜10月10日(月・祝)
会場  新国立劇場 オペラパレス/東京都渋谷区本町1-1-1
■新国立劇場オペラサイト
https://www.nntt.jac.go.jp/ticket/set-ticket/2223_season_opera/lineup.html
■問い合わせ 電話:03・5352・9999(ボックスオフィス)

文/堀けいこ

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