誰しもが憧れる「丁寧な暮らし」のイメージは、毎日手の込んだ料理をして、整った部屋でゆったりと食事をするというものではないでしょうか? 憧れに反して、仕事・子育て・勉強・介護などで忙しく、毎日の食事の支度に追われるのが現実。そこで、2016年に作りおきダイエットの大ブームを起こした、料理研究家・柳澤英子さんの著書『料理のその手間、いりません』から、柳澤さんが創意工夫を重ねて見出した「手間を省いてかろやかな気持ちで料理をするコツ」をご紹介します。
文/柳澤英子
むやみやたらに冷凍しない
食材をたくさん買いこんだときや、中途半端な量が残ってしまったとき、「とりあえず」冷凍庫に入れてしまっていませんか? 冷凍すれば保存期間は長くなりますが、例えば肉や魚をパックのまま冷凍すると、余分な水分がついているので霜がつき傷む原因に。また、ラップで包んだ半端食材は、凍ると見た目が判別しづらくなり、結局放置して無駄にしがちです(私はそれを「冷凍庫の化石」と呼んでいます)。
買ってきた食材を冷凍するなら、新鮮なうちに半調理してしまうのがおすすめ。食材を切り、調味料と合わせて冷凍しておけば、栄養価をキープしつつ約1か月間保存できます。保存容器に入れてあるので忘れることはないですし、加熱するだけで料理が1品できあがります。
調理で半端に残った食材はそのまま冷凍庫に放りこまず、使いきる努力をしましょう。例えば野菜が少しずつ余ったら、全部合わせて味つけすれば副菜になります。オムレツの具材にしたり、スープに入れたりしてもいいでしょう。その日に食べない場合でも調理して作りおきにするか、味つけだけして1品になる状態で冷凍するといいでしょう。
むやみやたらに冷凍するのはもう卒業! 食材の使い道を明確にし、冷凍の仕方を工夫して、おいしく無駄なく食べきりましょう。
【手間抜きポイント】
「とりあえず冷凍」は危険! 使い道を明確にしましょう。
パスタは別ゆでにしない
パスタ料理を作るとき、どうしても億劫になりがちなのが「別ゆで」の工程。たっぷりのお湯を沸かすのは時間がかかりますし、調理後に重い鍋を洗うのも大変ですよね。しかし、フライパンやレンチンをうまく使えば、別ゆでしなくてもパスタをおいしく調理できるんです。
例えばクリームパスタを作るなら、フライパンにパスタ、好みの具材、顆粒コンソメと少量の水、オリーブオイルを入れて混ぜ、蓋をして中火にかけます。パスタは早ゆでタイプを使うのがポイント。煮立ってきたら生クリームを加えて混ぜながら火を通し、仕上げに塩、こしょうで味をととのえればパスタのゆで上がりと同時にソース作りが完了。今まで洗い物がたくさんだったパスタがフライパンひとつで簡単に作れるんです!
また、火を使いたくない場合はレンチン調理がおすすめです。耐熱ボウルにパスタ、具材、水と調味料、オリーブオイルなどを入れて混ぜ、ふんわりとラップをしてレンチンするだけ。水分を多めにしてスープ風にしたり、クリームチーズを加えてクリームパスタにしたり、さまざまなパスタ料理が手軽に楽しめます(一度に作る量は2人分を目安にしてください)。
フライパンやレンチンだけでおいしく作るコツは「早ゆでタイプ」のパスタを使うこと。少ない水分、短い加熱時間でもやわらかくなります。また、別ゆでの工程を省くことで、具材から出る水分やうまみもパスタが吸収してくれます。調理時間もガス代も節約できていいこと尽くしだと思いませんか? 「面倒だからできあいのパスタでいいや」と買いに走る前に、ぜひフライパンやレンチンでパスタにトライしてみてください!
【手間抜きポイント】
フライパンひとつ、レンチン加熱でもおいしいパスタが完成します。
野菜の皮や葉っぱは捨てない
かぶ、セロリの葉の部分やなすの皮ってどうしていますか? もしかすると捨ててしまっている人が多いのではないでしょうか。そんな人に全力で「ちょっと待った!」といわせていただきたい。実は野菜の葉や皮には栄養価の高いものが多いんです。
例えば、青々としたかぶの葉は緑黄色野菜に分類され、βーカロテンが豊富に含まれています。ビタミンCやカルシウム、カリウムなどもとることができ、実は白い根の部分よりも栄養豊富! それほどクセもないので、かぶの漬け物に一緒に入れたり、おひたしや炒め物にしたりしておいしく食べることができます。
セロリも同様に、茎の部分よりも葉の方がβーカロテンやビタミン類、食物繊維がたっぷり。ややクセがあるので、スープに入れてさっと火を通したり、魚介などうまみのある食材と合わせて炒め物にするのがおすすめです。セロリの香りが好きな人はぜひ生で。酵素を逃さずとることができます。
なすの成分は90%以上が水分といわれています。しかし、紫色の色素をもつ皮にこそ重要な栄養素が! それは「ナスニン」というポリフェノールの一種で、抗酸化作用などが期待できます。なすは調味料のなじみをよくするために皮をむくことも多いと思いますが、むいた皮も料理に入れこんで一緒に食べることをおすすめします。
これまで皮や葉を生ゴミにしてしまっていた人は、今日から大事な食材として積極的に料理にとり入れてみてください。
【手間抜きポイント】
野菜の皮や葉っぱは、実は栄養価が豊富。捨てずに料理に使いましょう。
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『料理のその手間、いりません』(柳澤英子 著)
小学館
料理研究家・編集者。2011年、52歳のときに食を楽しむ独自の食事法を始め、1年後には26キロ減の47キロに。その後リバウンドもなく太りにくい体質と健康をキープ。忙しい人でも苦にならずに作れる簡単レシピが好評。『ひとりごはん』『ふたりごはん』(ともに西東社)がロングセラーに。近著に累計260万部超の大ベストセラーとなった『やせるおかず 作りおき』シリーズ(小学館)、『映(ば)える!おいしい!こんにゃく食堂』(小学館)、『柳澤式ラクやせオートミールレシピ』(扶桑社)など。