市民コレクターたちの寄贈によって形成されたという歴史をもつドイツ・ケルン市のルートヴィヒ美術館。
ルートヴィヒ美術館のコレクションは、二度の世界大戦、東西の分裂と統一という激動の20世紀を生きた寄贈者たちの、20世紀初頭から現代にいたる優れた芸術作品を次世代に継承したいという熱い思いから誕生しました。
そのコレクションは、ドイツ表現主義、キュビスム、ロシア・アヴァンギャルド、バウハウス、シュルレアリスム、ポップ・アートと続く多様な表現の宝庫。
ルートヴィヒ美術館の代表的な作品を紹介する展覧会が国立新美術館で開かれています。(9月26日まで)
本展では、油彩や彫刻、立体作品、映像、写真を含む152点の作品で、20世紀美術史をたどります。
本展の見どころを主催の国立新美術館の研究補佐員、杉本渚さんにうかがいました。
「ルートヴィヒ美術館は、優れたロシア・アヴァンギャルドのコレクションを有し、本展でも見どころの一つです。館名に名を冠する市民コレクター、ペーター&イレーネ・ルートヴィヒ夫妻は、冷戦時代の1970年代後半からロシア・アヴァンギャルド作品を収集していました。
ロシア・アヴァンギャルドは、19世紀末から1930年代にかけてロシアでおこった様々な前衛芸術を指し、なかでもカジミール・マレーヴィチによるスプレマティズム絵画は注目されます。出品作《スプレムス 38番》(1916)はその好例で、具体的な人や物の描写はなく、色とりどりの四角形が白い背景の上に配置されています。マレーヴィチは、幾何学的な形態だけで描かれた、絶対的な抽象絵画を試みたのです。
20世紀初頭は、ワシリー・カンディンスキーらによって抽象絵画が生み出された時代です。そのなかでスプレマティズムは、ロシア発のとりわけラディカルな一派でした。マレーヴィチが後の前衛作家に与えた影響は大きく、本展ではイワン・クリューンやグスタフ・クルツィスらの作品にもご注目ください」
歴史のなかに美術が見えてくる展覧会です。ぜひ会場に足をお運びください。
【開催要項】
ルートヴィヒ美術館展/20世紀美術の軌跡―市民が創った珠玉のコレクション
会期:2022年6月29日(水)~9月26日(月)
会場:国立新美術館 企画展示室2E
住所:東京都港区六本木7-22-2
電話:050・5541・8600(ハローダイヤル)
開館時間:10時から18時、金・土曜日は20時まで(入場は閉館30分前まで)
休館日:毎週火曜日
展覧会HP:https://ludwig.exhn.jp
料金:展覧会HP参照
アクセス:展覧会HP参照
巡回:京都国立近代美術館(10月14日~2023年1月22日)
取材・文/池田充枝