新潟県燕市は、国内シェア9割の洋食器をはじめ、多様な金属加工技術を世界に誇る「ものづくりの町」だ。ヤスリは、もともと自家用鋸の目を立てる道具として作られ始めたが、その上質な使い心地から「越後ヤスリ」として全国にその名を轟かせた。昭和14年に同地で創業した「柄沢ヤスリ」は、職人が専用の機械で1本ずつ目立てをする昔ながらの製法を守り、工業用の組ヤスリを主力に、その高度な技術を活かした日用品も数多く手がけている。
「弊社ならではの小さなヤスリを作りたいという思いから、約8年前に生み出したのがこの踵用・爪用ヤスリです。人の体に触れるものなので、繊細な目立てにするのはもちろん、使いやすいように特殊な技術で踵や爪の曲線に合わせたカーブを施しています」と、代表取締役の柄沢良子さんは語る。
通常、ヤスリは上目1本と下目1本からなり、上目が切削作業を、下目は横滑りを防ぎながら切り粉を排出する作業を担う。本ヤスリは上目のサポート役である下目を2本に増やしたため、より安定して磨けるのが特徴だ。
ヤスリの目立ては、半世紀以上のキャリアを持つ御年99歳の岡部キンさんが行なっている。岡部さんが作るヤスリは、引っ掛かりがよく削りやすいと評判で、長年愛用するファンも多い。その熟練の技術は、今も元気な岡部さんの直接指導のもと、若い職人たちに受け継がれている。
【今日の逸品】
岡部さんのヤスリ
柄沢ヤスリ
3,300円~(消費税込み)