取材・文/池田充枝
長い間、フェルメール本人が壁面に描かれていたキューピッドの絵を塗りつぶしたと考えられていたものが、調査により画家の死後、何者かによって行われていたということが判明しました。
誰の手によってキューピッドが消されたかの謎を残しながら、上塗りされた絵具層を取り除き、元の絵を復元する作業が慎重に行われました。
今回、所蔵先のドレスデン国立古典絵画館から修復後の《窓辺で手紙を読む女》が、世界に先駆けて日本で初公開される展覧会が開かれています。(4月3日まで)
本展では、《窓辺で手紙を読む女》のほかに、同館が所蔵する17世紀オランダ絵画の黄金期を彩る珠玉の名品約70点が紹介されます。
本展の見どころを東京都美術館学芸員の髙城靖之さんにうかがいました。
「本展の注目は何といっても修復を終えたばかりの《窓辺で手紙を読む女》でしょう。この作品は、フェルメールが自身のスタイルを確立したといわれる初期の傑作です。
手紙を読む女性の背後の壁にキューピッドを描いた画中画が隠されていることは以前から知られていました。長らく、画家自身が隠したと考えられてきましたが、画家の死後に第三者によって隠されたことが近年の修復の過程で判明し、画中画を隠していた壁の絵具が取り除かれ、フェルメールの描いた当初の姿が蘇りました。構図だけでなく、当時の輝きを取り戻した鮮やかな色彩も必見です。
この作品以外にも、巨匠レンブラントが妻をモデルに描いた《若きサスキアの肖像》や、農民の日常を得意としたアドリアーン・ファン・オスターデの《タバコを吸う二人の農夫》、異国原産の貴重な花々を描いたヤン・デ・ヘームの《花瓶と果物》など、ドレスデン国立古典絵画館が誇る17世紀オランダ絵画の数々をご堪能いただけます」
フェルメールだけでなく、レンブラントもあります。ぜひ会場でご鑑賞ください。
【開催要項】
ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展
会期:2022年2月10日(木)~4月3日(日)※2月14日(月)は臨時開室
休室日:月曜日、3月22日( 火) ※ただし2月14日(月)、3月21日(月・祝)は開室
開室時間:9時30分から17時30分まで、金曜日の夜間開室は、展覧会公式サイトでご確認ください。
会場:東京都美術館 企画展示室
住所:東京都台東区上野公園8-36
電話:050・5541・8600(ハローダイヤル)
展覧会公式サイト:https://www.dresden-vermeer.jp/
料金:一般 2,100円/大学生・専門学校生 1,300円/65歳以上 1,500円
※日時指定予約制
アクセス:公式サイト参照
巡回:北海道立近代美術館(4月22日~6月26日)、大阪市立美術館(7月16日~9月25日)、宮城県美術館(2022年10月8日~11月27日)を予定
取材・文/池田充枝