日本と韓国の国宝仏の弥勒菩薩像2体が、いま東京・上野の東京国立博物館で、初めて同時公開されています。
昨年の日韓国交正常化50周年を経て、日韓両国の文化交流の一層の促進をはかるために企画された本展は、両国の代表的な半跏思惟像(はんかしゆいぞう)を1体ずつ選び、それらを両国において一緒に展示することで、互いの素晴らしい文化にふれることを主旨としています。
日本からは奈良・中宮寺門跡の国宝・半跏思惟像が選ばれました。飛鳥時代(7世紀後半)の作で、クスノキで作られ、聖徳太子が母君、穴穂部間人(あなほべのはしひと)皇后の姿を刻んだものと言い伝えられています。
韓国からは韓国国立中央博物館の国宝78号の半跏思惟像が選ばれました。三国時代(6世紀後半)の作で、三国時代の朝鮮半島では多くの半跏思惟像が作られ、日本の半跏思惟像は三国時代の影響を強く受けて作られました。
先立つ韓国展(5月24日~6月12日)では、中宮寺門跡の半跏思惟像が初めて海を渡りました。今回の日本展では、韓国国立中央博物館の国宝78号の半跏思惟像が初来日しています。
本展の見どころを、東京国立博物館・特別展室室長の丸山士郎さんにうかがいました。
「半跏思惟像とは、右足を左足の膝の上に組んで座り(半跏)、右手を頬に添えてもの思いにふける(思惟)姿をした仏像のことをいいます。半跏思惟像はお釈迦様が出家する前の思索する姿を映したものと伝えられ、我々と同じように悩みをもつ身近な仏像であるといえます。
日本で仏像製作がはじまったのは7世紀初めですが、当時の仏像は左右相称で、厳かさを示すために硬い表現のものが大半でした。中宮寺門跡の国宝・半跏思惟像は、身体の線の柔らかさや、ほほえみをたたえた表情がとても自然です。写実ではありませんが、人間の理想的な姿や表情を映したものといえます。
韓国の国宝78号の半跏思惟像は、中宮寺門跡のものより100年ほど早く作られました。金銅仏のなかでは83cmもある大きい像で、金銅仏らしい硬さもありますが、抽象美術のような曲線の美しさ、表情の柔らかさなど、韓国では珍しい優しい姿の仏像といえます。
両国を代表する半跏思惟像の至高のほほえみを、じっくりご鑑賞ください」
日韓の仏像の美にふれ、両国の交流の深さを知るまたとない機会です。ぜひ足をお運びください。
公式サイトはこちら
【特別展 日韓国交正常化50周年記念 ほほえみの御仏-二つの半跏思惟像-】
■会期/6月21日(火)~7月10日(日)
■会場/東京国立博物館 本館特別5室
■住所/東京都台東区上野公園13-9
■電話番号/03・5777・8600(ハローダイヤル)
■料金/当日:一般1000円 大学生700円 高校生400円 ※中学生以下無料、障がい者手帳提示者と介護者1名は無料
■開館時間/9時30分から20時まで、6月21日(火)は17時まで(入館は閉館30分前まで)
■休館日/会期中無休
■アクセス/JR上野駅公園口または鶯谷駅南口より徒歩約10分