明治38年創業の「ぽん多 本家」(東京・上野)は、カツレツ(とんかつ)の生みの親の洋食店として有名です。もともとは西洋料理の“コートレット”(cotelette)が訛って“カツレツ”となりました。
「ぽん多」は、今では東京のとんかつの名店として名を馳せていますが、洋食屋の老舗でもあり、魚介のフライやシチューもお得意です。
きす、あなご、小柱などはてんぷらに欠かせないてん種ですが、「ぽん多」はこれらもフライに仕立てます。てんぷらは薄い衣を通して、油と魚の水分を交換するわけですが、フライは小麦粉、卵、パン粉で衣を作り、素材をしっかりとガードします。揚げながら、蒸しているわけですね。ですから、てんぷらより、身がジューシーに仕上がっています。
なかでも、小柱は軽めに火が入って甘く、フライならではの味わいが楽しめます。
小柱ばかりか、予約でお願いしておけば、平貝、しゃこなどもフライにしてくれます。これらの魚介を前菜とすると、この後の主菜がカツレツでは、揚げ物が続いてしまいます。
そんな時に注文するのが、冒頭写真の「ポークソテー」です。下拵えで、豚肉ロースの脂身を徹底的に落としたあと、ソテーにします。肉汁がたっぷりで、豚肉の香りが立ち昇り、カツレツとは全く違った傑作です。
「ぽん多」でカツレツを何度も召し上がられた方に、お勧めのメニューです。一人ではなかなか食べきれませんので、仲間を誘って出かけてみてください。
【ぽん多 本家】
住所/東京都台東区上野3-23-3
TEL/03-3831-2351
営業時間/[火~土]11:00~14:00(L.O.13:45) 16:30~20:00(L.O.19:45)
[日・祝]11:00~14:00(L.O.13:45) 16:00~20:00(L.O.19:45)
定休日/月曜(祝日の場合は火曜休)
文/山本益博
料理評論家・落語評論家。1948年、東京生まれ。大学の卒論「桂文楽の世界」がそのまま出版され、評論家としての仕事をスタート。TV「花王名人劇場」(関西テレビ系列)のプロデューサーを務めた後、料理中心の評論活動に入る。