文/石川真禧照(自動車生活探険家)
2016年に車づくりを刷新したボルボ。その第1弾となった最上級大型SUVのXC90に、待望のディーゼルエンジン搭載車が加わった。初夏の山形県酒田市で試乗した同車の仕上がりや魅力を紹介したい。
ボルボの乗用車の中で、最上級の7人乗り大型SUVがXC90だ。初代が発表されたのは2002年。2代目となる現行モデルが登場した2016年は、ボルボが車づくりの大改革を行なった年である。1兆円を超える莫大な資金を投じて、すべての車種の構造やデザインを刷新した。
新世代ボルボが目指したのは、安全性の向上・充実はもとより、電動化や自動運転をも見据えた車づくりだった。新しい発想を取り入れた斬新なデザインもボルボ車の魅力のひとつになった。虚飾を排したシンプルさ、機能的かつ温かみのある内装、端正な外観も大きな話題を呼んだ。
「車は人によって運転されるもの。従って、ボルボの車は常に安全でなければならない」
これはボルボの創業者であるアッサール・ガブリエルソンとグスタフ・ラーソンの言葉である。安全技術の研究開発において、ボルボが他社をリードしているのはこの言葉を忠実に守り続けているからにほかならない。
新世代ボルボの第1弾となったXC90には、数々の先進安全技術が搭載された。そのひとつが世界初となる右折時対向車検知機能である。交差点での右折時、直進してくる対向車との距離や速度を検知し、衝突する可能性が高いと判断すると自動ブレーキが作動して衝突回避を支援する。
また、道路から逸脱すると即座にシートベルトを巻き上げ、安全な着座姿勢を確保する。強い衝撃に対しては、衝撃吸収機能を備えた座席が乗員の体(特に脊椎)にかかる衝撃を緩和する。これも世界初となる安全装備で、ボルボはこれらの機能を3年も前にXC90で実用化している。
昼夜問わず人や自転車を検知
ボルボ車に備わる安全システムは、他の車両はもちろん、歩行者、自転車、大型動物なども検知し、衝突回避や衝突時の被害軽減を支援する。昼夜を問わず歩行者や自転車を検知する機能も、ボルボが世界に先駆けて実用化したものだ。
ちなみに3点式シートベルトを初めて実用化したのもボルボである。この技術は乗員の安全確保に不可欠であると確信し、同社はその特許を公開。他社が無償で使用できるようにした。
人と車の安全に関する技術開発の熱意が、ボルボ車人気の大きな要因のひとつといえる。
アクセルペダルを踏み込み、ゆっくり走り出す。床下という車体の最下部に電池を搭載しているので、峠などの急カーブや高速道路でも非常に安定している。乗り心地はやや硬めだが、アクセルペダルの操作に対する反応はよく、加減速はじつにスムーズだ。
発進加速がじつにスムーズ。静粛性が高く快適な乗り心地
21世紀になって、ボルボは環境や資源を考慮し、将来、全車種のエンジンを排気量2L以下の4気筒に切り替えると宣言した。
それを実現すべく、今年の3月にXC90に高出力のクリーンディーゼルターボエンジンを搭載する「D5」が追加された。ターボの過給タイミングなどを緻密に電子制御することで、かつてのV型6気筒3ℓ並みの力強さを発揮する。
D5は全長約5m、重量約2.1トンの大型車だが、その走りはじつに軽快だ。1500回転あたりの低回転域でもアクセルペダルの踏み込みに対する反応はよく、発進や加速がスムーズである。
アイドリング時も、ディーゼル特有のエンジン音は抑えられている。これなら早朝の住宅街でも周囲を気にする必要はないだろう。高速走行でも車内の静粛性は極めて高く、乗り心地は申し分ない。
今回、大人3人に重たい撮影機材を満載して試乗したが、燃費は街中㎞で8~11km/L、国道や高速道路では14 ~16km/Lを記録した。
室内は北欧デザインの洗練された内装が美しい。後席や3列シートも快適なので、友人家族とのロングドライブでも心豊かな時間を過ごすことができる。
【ボルボ/XC90 D5 AWD インスクリプション】
全長× 全幅× 全高:4950×1960×1775mm
ホイールベース:2985mm
車両重量:2100kg
エンジン:直列4気筒DOHCディーゼルターボ/1968cc
最高出力:235PS/4000rpm
最大トルク:48.9㎏-m/1750~2250rpm
駆動方式:電子制御式4輪駆動
燃料消費率:13.6km/L(WLTCモード)
ミッション形式:電子制御8速自動変速機
サスペンション:前/ダブルウィッシュボーン 後/マルチリンク
ブレーキ形式:前・後:ディスクブレーキ
乗車定員:7名
車両価格:944万円(消費税込み)
問い合わせ:ボルボ・カスタマーセンター 電話:0120・922・662
文/石川真禧照(自動車生活探険家)
撮影/佐藤靖彦
※この記事は『サライ』本誌2019年8月号より転載しました。