取材・文/池田充枝
ヨハネス・フェルメールは、1632年、オランダのデルフト生まれ。21歳から画家として活動を始め、おもに人々の日常を題材とする風俗画を描きました。
吟味された構図、緻密な筆遣い、やさしく穏やかな光の表現を用いながら、美しく洗練された作品を残しました。
当時、デルフトの画家組合の理事を務め、その絵を愛好するパトロンもおり、高い評価を受けていましたが、1675年に43歳で没すると、次第に忘れ去られていきました。
19世紀になってから再発見され、改めて評価されるようになりました。現存する作品は35点ともいわれ、1995-96年に米国ワシントンとオランダのデン・ハーグで開かれた「フェルメール展」では20点以上の作品が一堂に会し、世界的なフェルメール・ブームの端緒となりました。
東京・上野の森美術館では過去最多の9点(うち2点は期間限定)のフェルメール作品がやってくる展覧会が開かれています。(2019年2月3日まで)
フェルメール展 (会場:上野の森美術館)
本展では、日本初公開の《ワイングラス》、《赤い帽子の娘》(12月20日までの展示)をはじめ、アムステルダム国立美術館の至宝《牛乳を注ぐ女》ほか欧米の主要美術館から8点が出品されます。また、1月9日から2月3日までの期間限定でドレスデン国立古典絵画館から《取り持ち女》が初来日し、全9点が展示されます。
そのほか、オランダ黄金期を代表する画家であるハブリエル・メツー、ピーテル・デ・ホーホ、ヤン・ステーンなど世界的にも稀少で評価の高い作品約40点も出品されます。
本展の見どころを、主催者にうかがいました。
「大きな見どころはなんといっても、日本の美術展史上最多のフェルメール作品が上野の森美術館にやってくるということでしょう。さらにそれらが『フェルメール・ルーム』というひとつの部屋に集められます。
風俗画家として知られるフェルメールですが、初期には聖書や神話の場面などをテーマにした物語画を描いていた時期もありました。本展では現存作品のなかで最も大きく、また唯一、聖書の場面を描いた最初期の《マルタとマリアの家のキリスト》から、日本初公開の《ワイングラス》や《赤い帽子の娘》、そして晩年に描かれた《手紙を書く婦人と召使い》までが網羅されており、フェルメールの作品同士を見比べながらその変遷を辿ることができます。
現存35点ともいわれるフェルメール作品のうち、『手紙』をテーマにした作品は計6点伝わっていますが、そのうちの3点が展示され、また彼の作品にたびたび登場する『毛皮つきの黄色いガウン』を着た女性も3点並びます。それらを生で見比べていただけるのも『フェルメール・ルーム』ならではの楽しみ方になるでしょう。
今回は、入場待ち時間の緩和を目的とした日時指定入場制に加えて、入場者全員に音声ガイドを無料でご提供しますので、よりじっくり作品と向き合っていただければ幸いです」
芸術の秋に浸りたい静謐なフェルメールの世界!! ぜひ会場でご堪能ください。
【開催要項】
フェルメール展
会期:2018年10月5日(金)~2019年2月3日(日)
会場:上野の森美術館
住所:東京都台東区上野公園1-2
電話番号:0570・008・035(インフォメーションダイヤル)
展覧会公式サイト:www.vermeer.jp/
開館時間:9時30分から20時30分まで(入場は閉館30分前まで)※開館・閉館時間が異なる日があります。
休館日:12月13日(木)
入場方法:日時指定入場制(待ち時間を緩和する目的で、入場時間枠を指定したチケットを事前に購入します。HP参照
巡回:大阪市立美術館(2019年2月16日~5月12日)※一部展示内容が異なります
取材・文/池田充枝