取材・文/池田充枝

食いしん坊でおっちょこちょい、今では誰もが知る世界で一番有名なクマである「プーさん」。イギリスのアラン・アレクサンダー・ミルン(1882-1956)の物語にアーネスト・ハワード・シェパードが挿絵を描いた『クマのプーさん』が出版されたのは1926年。

A.A.ミルンの息子、クリストファー・ロビンとぬいぐるみのクマがモデルのお話は、E.H.シェパードの挿絵によって機知とユーモアあふれる世界を生み出しました。

二人の共作によって生まれた『クマのプーさん』(1926)、『クマのプーさんとぼく』(1928)、『プー横町にたった家』(1929)は、世界中の人々を魅了し、50以上の言語に翻訳され、全世界で5000万部以上のシリーズ本が出版されています。

 

A.A.ミルン、クリストファー・ロビン・ミルンおよびプー・ベア ハワード・コスター撮影、1926年 (C)National Portrait Gallery,London.

A.A.ミルン、クリストファー・ロビン・ミルンおよびプー・ベア ハワード・コスター撮影、1926年 (C)National Portrait Gallery,London.

 

E.H.シェパード、ハワード・コスター撮影、1932年、ノラ・シェパード夫人より寄贈  (C)National Portrait Gallery,London. ※参考画像(本展には出品されません)

E.H.シェパード、ハワード・コスター撮影、1932年、ノラ・シェパード夫人より寄贈 (C)National Portrait Gallery,London.

 

『クマのプーさん』初版本、1926年;メシュエン社によりロンドンにて出版;ジャロルド&サンズ社印刷、V&A内ナショナル・アート図書館所蔵 (C) Image coutesy of the Victoria and Albert Museum,London

『クマのプーさん』初版本、1926年;メシュエン社によりロンドンにて出版;ジャロルド&サンズ社印刷、V&A内ナショナル・アート図書館所蔵 (C) Image coutesy of the Victoria and Albert Museum,London

 

クマのプーさんのふるさと、英国ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A)からプーさんの原画コレクションがやって来ます。(4月14日まで)

本展は、シェパードが描いたプーさんの原画を世界最大規模で所蔵するV&Aが、鉛筆素描画をはじめとする原画など200点以上で構成する展覧会で、母国イギリス(ロンドン)とアメリカ(アトランタ、ボストン)を巡回し、日本にやってきます。

 

「バタン・バタン、バタン・バタン、頭を階段にぶつけながら、クマくんが二階からおりてきます」『クマのプーさん』第1章、E.H.シェパード、鉛筆画、1926年、V&A所蔵 (C)The Shepard Trust

「バタン・バタン、バタン・バタン、頭を階段にぶつけながら、クマくんが二階からおりてきます」『クマのプーさん』第1章、E.H.シェパード、鉛筆画、1926年、V&A所蔵 (C)The Shepard Trust

 

「ハチのやつ、なにか、うたぐってるようですよ」『クマのプーさん』第1章、E.H.シェパード、鉛筆画、1926年、V&A所蔵 (C)The Shepard Trust

「ハチのやつ、なにか、うたぐってるようですよ」『クマのプーさん』第1章、E.H.シェパード、鉛筆画、1926年、V&A所蔵 (C)The Shepard Trust

本展の見どころを、主催であるフジテレビのプロデューサー、中里弘毅さんにうかがいました。

「見どころは何といっても、シェパードの原画が数多く集まっているところです。昨年、シェパードの原画の1つが、オークションで、6300万円で落札されてニュースになりましたが、そうした価値のあるシェパードの原画約90点が集められています。

またその1点1点を見ると、シェパードの手法や、潜ませた仕掛けなどが見えてきます。

例えば、ご飯が食べられなくて元気がないプーが、少年クリストファー・ロビンに、「力が出る本を読んでくれ」と頼むシーンの挿絵があるのですが、クリストファー・ロビンが読んであげた本の表紙に「JAM」と書かれています。甘くておいしい「ジャム」と書かれた本なら、きっと力がでるだろう、というユーモアなのですが、このことは文章では触れられておらず、シェパードが挿絵だけで遊んだユーモアです。このように、シェパードはミルンの物語をただ描くのではなく、ミルンの遊び心を挿絵でも表現しましたが、そうしたシェパードのセンスが原画には表れています。

「プーとコブタが、狩りに出て…」『クマのプーさん』第3章、E.H.シェパード、ペン画、1926年、クライブ&アリソン・ビーチャム・コレクション所蔵 (C)The Shepard Trust

「プーとコブタが、狩りに出て…」『クマのプーさん』第3章、E.H.シェパード、ペン画、1926年、クライブ&アリソン・ビーチャム・コレクション所蔵 (C)The Shepard Trust

 

「枝には、ハチミツのつぼが10ならんでいて、そのまんなかに、プーが…」『クマのプーさん』第9章、E.H.シェパード、ラインブロックプリント・手彩色、1970年、英国エグモント社所蔵 (C)E.H.Shepard colouring 1970 and 1973  (C)Ernest H.Shepard and Egmont UK Limited

「枝には、ハチミツのつぼが10ならんでいて、そのまんなかに、プーが…」『クマのプーさん』第9章、E.H.シェパード、ラインブロックプリント・手彩色、1970年、英国エグモント社所蔵(C)E.H.Shepard colouring 1970 and 1973 (C)Ernest H.Shepard and Egmont UK Limited

また展示だけでなく、プーさんの世界観をイメージした装飾などを施し、会場にいるだけでウキウキする可愛らしい雰囲気となっています。グッズも展覧会限定のものだけで、200点以上ご用意しました。特に、今回シェパードの鉛筆画を元にしたグッズをV&Aが作りましたが、鉛筆画がグッズになったのは初めてのことだそうです。

原画は今年の公開が終わると、作品保護のため最低10年は非公開となりますので、次に見られるのは、かなり先になってしまいます。その点でも見逃せない展覧会になっています」

百町森の地図、『クマのプーさん』見返し用のスケッチ、E.H.シェパード、鉛筆画、1926年、V&A所蔵 (C)The Shepard Trust. Image coutesy of the Victoria and Albert Museum,London

百町森の地図、『クマのプーさん』見返し用のスケッチ、E.H.シェパード、鉛筆画、1926年、V&A所蔵 (C)The Shepard Trust. Image coutesy of the Victoria and Albert Museum,London

年齢を問わず愛されるプーさん!その誕生の物語を貴重な資料で辿る展覧会です。ぜひ会場足をお運びください。

【開催要項】
クマのプーさん展
会期:2019年2月9日(土)~4月14日(日)
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム
住所:東京都渋谷区道玄坂2-24-1
電話番号:03・5777・8600(ハローダイヤル)
https://wp2019.jp
開館時間:10時から18時まで、金・土曜日は21時まで(入館は各閉館時間の30分前まで)
休館日:2月19日(火)、3月12日(火)
巡回:2019年4月27日~6月30日 大阪・あべのハルカス美術館

取材・文/池田充枝

 

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