北陸新幹線の開業で、首都圏からの交通が格段に便利になった富山県。富山といえば、富山湾で獲れるキトキト(富山の方言で新鮮の意味)の魚に恵まれる地です。富山湾は最深部が約1200m。太平洋側の駿河湾・相模湾と並び、日本三大深湾のひとつで、深海に生息するシロエビやベニズワイガニをはじめ、約600種類の魚が生息するといわれています。魚種の豊富さは、約3000mの立山連峰の森の栄養分や酸素をたっぷり含んだ水が富山湾に注ぎ込み、「天然のいけす」となっているからです。
富山の冬の味覚の代表といえば、氷見(ひみ)の寒ブリです。例年11月末~2月までの期間限定のお楽しみ。産卵期前の身がしまり、脂ののった寒ブリは、400年以上の歴史を誇る定置網漁法で水揚げされます。鰤の群れが富山湾に滞在する数時間を狙い、作業が行なわれます。
氷見の沿岸には7つの漁港があり、定置網が仕掛けられるのはそれぞれ船で10分~20分の位置。漁場から港、そして市場へと寒ブリは最速で運ばれてきます。氷見市には、氷見温泉郷があり、旅館や民宿などで湯浴みと寒ブリの両方が堪能できます。泉質は塩化物泉など。氷見温泉郷から望む立山連峰の幻想的な風景とともに、冬の“口福”をぜひ愉しんでください。
富山の冬の味覚、脂ののった寒ブリ(写真提供/富山県観光連盟)
取材・文/関屋淳子
桜と酒をこよなく愛する虎党。著書に『和歌・歌枕で巡る日本の景勝地』(ピエ・ブックス)、『ニッポンの産業遺産』(エイ出版)ほか。旅情報発信サイト「旅恋どっとこむ」(http://www.tabikoi.com)代表。