熊本県最南部にある人吉は町の中心部を清流・球磨川が流れる長閑な地です。
ここは球磨焼酎と呼ばれる米焼酎のふるさとで、28の蔵元があります。球磨焼酎は500年近い歴史があるのですが、じつは昭和の初めまで市販のための銘柄がなく、その味が人吉・球磨地方から外に出ることはほとんどありませんでした。戦後になり少しずつ九州や関西で知られるようになり、今や全国区ですが、それでも人吉限定の商品などがあり、旅の途中で味わうのは楽しいものです。
球磨川沿いには温泉街が形成され、清流のせせらぎを聞きながら湯あみが楽しめる旅館が点在しています。それに加えて町の中にも立ち寄りの温泉公衆浴場が30カ所ほどあり、市民の憩いの場となっています。
市街地の中心部、人吉城跡公園の近くにあるのが「元湯」です。瓦葺きの堂々とした建物で、朝早くから一番風呂を求めて常連客が集まります。泉質はアルカリ性の炭酸水素塩泉、なめらかな湯です。
人吉温泉は源泉数が多く、単純温泉や炭酸泉などもあり、異なる湯を楽しめるのも魅力です(写真提供:熊本県)。
取材・文/関屋淳子
桜と酒をこよなく愛する虎党。著書に『和歌・歌枕で巡る日本の景勝地』(ピエ・ブックス)、『ニッポンの産業遺産』(エイ出版)ほか。旅情報発信サイト「旅恋どっとこむ」(http://www.tabikoi.com)代表。