豊臣秀吉が愛した温泉地として知られる兵庫県の有馬温泉。六甲山の北側に湧く山峡の温泉地です。
その歴史は古く、舒明天皇(593〜641年)、孝徳天皇(596〜654年)の行幸がきっかけとなり、温泉の存在が知られるようになったといいます。奈良時代には僧・行基が温泉寺を建立し、さらに豊臣秀吉が足しげく通い、温泉の整備に努めました。
由緒ある温泉であることに加え、その濃厚な温泉成分も見逃せません。療養泉として指定される9つの温泉(単純泉、二酸化炭素泉、炭酸泉、塩化物泉、硫酸塩泉、含鉄泉、硫黄泉、酸性泉、放射能泉)のうち、硫黄泉と酸性泉を除く7つの成分が混合し、源泉となっているのです。この湯が長い歴史の中で多くの人々を魅了してきた理由がわかるようです。
有馬温泉には主にふたつの温泉があります。殺菌作用があり茶褐色の金泉(下写真)、飲泉もできる透明な銀泉。異なる湯を肌で感じてみてください。
また温泉街も風情があり散策に相応しい雰囲気です。名物の炭酸せんべいや有馬サイダーなども土産品に格好です(写真提供:神戸国際観光コンベンション協会)。
取材・文/関屋淳子
桜と酒をこよなく愛する虎党。著書に『和歌・歌枕で巡る日本の景勝地』(ピエ・ブックス)、『ニッポンの産業遺産』(エイ出版)ほか。旅情報発信サイト「旅恋どっとこむ」(http://www.tabikoi.com)代表。