文/鈴木拓也
肩の痛みで「手が後ろに回らない」、「つり革が持ていない」という症状に悩んではいないだろうか?
最初は「ほうっておけばじきに治る」と楽観していたものの、症状は良くならず、病院に行ったら異常なしとされ、整骨院に行っても軽快しない……それは、もしかすると「五十肩」かもしれない。
五十肩の多くは「肩関節周囲炎」のことで、肩のどこかに炎症が起きて痛みが生じており、なかなか収まらないのが特徴。そんな厄介な五十肩に悩む人たちを年間約200人診て、治してしまうと評判なのが、「日本唯一の五十肩専門整体師」の橋垣好人さん(橋垣整体院院長)だ。
橋垣さんも、整体師になった当初から五十肩を治せたわけでなく、10年間の試行錯誤があったという。やがて、「どんな五十肩でも治せる」治療技術を蓄積し、どこの筋肉に原因が潜んでいて、どうアプローチすれば改善するかを研究して、セルフケアの手法も編み出している。それを1冊の本にまとめたのが、『私も治った!「五十肩」の治し方』(セルパ出版)だ。
本書には写真入りで、各症状・原因に対応した体操やストレッチが何種類も掲載されている。いずれも、すぐに習得できるシンプルなやり方でとっつきやすい。例を挙げると、以下のようなセルフケアがある。
■痛みが強ければ、まずこの「振り子体操」
五十肩の痛みの程度は人によって異なり、むごい痛みもあれば軽いものもある。もし痛みが結構強ければ、以下の体操が効果的。用意するものは、水を詰めた500mlのペットボトルまたはダンベル。
1. 五十肩側の手にペットボトル(かダンベル)を持つ。
2. 痛まない角度で椅子に手をつき、少し前かがみになる。
3. 肩が痛まない程度に前方向に手を振る。
4. 肩が痛まないように後方に手を振る。10往復を1回とし、最初は無理せず1日1回で。慣れてきたら徐々に回数を増やす。
5. 左に手を振る。
6. 右に手を振る。こちらも10往復を1回とし、最初は無理せず1日1回で。慣れてきたら徐々に回数を増やす。
7. 円を描くように動かす。最初は小さな円を描き、慣れてきたら大きな円を描くように回す。こちらも10往復を1回とし、最初は無理せず1日1回で。慣れてきたら徐々に回数を増やす。
こうしたセルフケアもさることながら、予防的な生活習慣の確立も大事だと橋垣さんは説く。というのも、むごい五十肩に悩んでいる人には、共通点があるという。それは、ほとんどの人は長時間にわたり同じ姿勢をとっている点。橋垣さんは、本書でこう述べる。
デスクワークはもちろんのこと、趣味で編み物をしている方も非常に多いですし、仕事で車を長時間運転する人もなりやすい傾向にあります。
どの患者さんも、痛めた原因がはっきりしない方は、必ず長時間の同じ姿勢が続いてしまう作業をしているかたばかりです。
デスクワークが多いのであれば、こまめに肩をのばすなどして、肩回りの筋肉をほぐすように心がけてください。
(本書103pより引用)
こうしたライフスタイルを送っている人の多くは、運動不足でもあるという。その対策として、ラジオ体操、ジムで筋トレ、ランニング等、週に最低1度は身体を動かすよう、橋垣さんはアドバイスする。
五十肩には、「1回なればもうならない」など誤った俗信も多いが、それに惑わされず、生活習慣の改善に努め、症状があるなら本書のセルフケアを続けて、健康な肩を取り戻すようにしたい。
【今日の健康に良い1冊】
『私も治った!「五十肩」の治し方』
(橋垣好人著、本体1,500円+税、セルバ出版)
文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は散歩で、関西の神社仏閣を巡り歩いたり、南国の海辺をひたすら散策するなど、方々に出没している。