写真・文/石津祐介
栃木県の南部、埼玉県と群馬県の県境に位置する栃木市は、江戸時代には、日光東照宮へ幣帛(へいはく)を奉納する勅使が通った脇街道の「日光例幣使街道(にっこうれいへいしかいどう)」の宿場町として栄えた街だ。往時は「栃木宿」と称した。
市内を流れる巴波川(うずまがわ)は舟運が盛んで、栃木河岸は江戸との交易物資の集散地として大いに栄えた。
栃木宿の北側に位置する嘉右衛門町(かえもんちょう)は、栃木県では初となる重要伝統的建造物群保存地区に選定されている町並みだ。
保存地区は、天正期(1573〜1592年)に新田開発され、その後発展した嘉右衛門新田村を起源としている。地区の西側には巴波川が流れ、地区の中央には旧例幣使街道が南北に通っており、その街道に沿って江戸時代末期から昭和初期にかけて建てられた商家や職人の町屋建築が軒を連ねている。
時代ごとの建築様式が見られる町並みが多様な景観を作り出していることから、2012年に重要伝統的建造物群保存地区として選定された。
街道を北に進むと、油伝味噌(あぶでんみそ)が見えてくる。ここは江戸の天明年間(1781~89)に油屋として開業し、江戸の末期より味噌の製造を始めた味噌屋だ。店舗の一角では、天然酵母の味噌を使った、豆腐、里芋、こんにゃくの田楽が楽しめる。
その賑わいから小江戸と呼ばれた栃木宿。当時の宿場町の賑わいを想いながら、川沿いに残る重厚な蔵と、旧例幣使街道の昔ながらの町並みを散策してみてはどうだろうか。
【嘉右衛門町伝統的建造物群保存地区】
アクセス:JR両毛線・東武日光線で「栃木駅」下車。
車は東北自動車道、栃木インターより10分
【油伝味噌】
栃木県栃木市嘉右衛門町5-27
電話番号/0282-22-3251
営業時間/10:30~17:00(無休)
写真・文/石津祐介
ライター兼カメラマン。埼玉県飯能市で田舎暮らし中。航空機、野鳥、アウトドア、温泉などを中心に撮影、取材、