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仕事において上司への「パス」=「報・連・相」が上手な部下は、上司からの評価や生産性も高いのではないでしょうか。一方で、「パスの上手さ」=「報・連・相の基本」を才能と考えてしまい、チーム内での再現性を高めない上司も多くいます。
この記事では、「報・連・相」のコツと、部下の成長が加速する「報・連・相」へのフィードバックの方法を解説します。
同じゲームをやっているか?
上司と部下で同じゲームをやっていますか? 上司であるあなたはサッカーをやっているつもりかもしれませんが、部下はバスケットボールをやっている認識になっていないでしょうか。「そんなわけないだろ」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、本当にそうでしょうか?
部下との日々のコミュニケーションを思い返してみてください。上司は絶好のパスを出しているつもりでも、部下が全く動かなかったり、部下からとんでもないパスが飛んできたりすることはありませんか?
適切なコミュニケーションを図るには、そもそもどんなゲームをやっているのかの認識を上司と部下で合わせなくてはなりません。会社において自部署はどんなことを求められている部署なのか、部署の目的を果たすために個人に求められている役割や機能は何なのか、その役割に対してどのくらいの出来栄えを求められているのか。これらの認識を正しくすり合わせておかないと、「気が付いたらお互いに違うゲームをやっていました」となりかねません。最低限、これらの認識を合わせてからスタートしないと、ゲームそのものが成立しないのです。
・部署として求められる役割 → サッカーで勝つのか、バスケで勝つのか? → 具体的なKGIやKPIを明確にする
・個人として求められる役割 → オフェンスなのか、ディフェンスなのか? → 自分が部署内で果たすべき責任範囲を明確にする
・求められる出来栄え → 1点取ればいいのか、10点必要なのか? → 自分がどのくらいやれば評価されるかを明確にする
「報・連・相」の基本
前述のとおり、自身の役割が明確になって初めて上司部下のパス=「報・連・相」が成り立ちます。「報・連・相」で気を付けなければならないポイントは以下の3つです。
1.上司が「報・連・相」してほしい事柄を明確にしているか
2.「事実」での「報・連・相」がなされているか
3.部下に考えさせているか
なぜ、これらがポイントとなるか、1つずつ見ていきましょう。
1.上司が「報・連・相」してほしい事柄を明確にしているか
上司が部下からの「報・連・相」を求める理由のひとつが自身の意思決定の材料にするためです。会社における上司の役目として「意思決定をしてチームを動かしていく」ことがありますが、現場からの情報が上がってこないと上司も意思決定できなくなります。
つまり、自身が意思決定するためにどのような情報がほしいかを、あらかじめ部下に伝えておかなくてはなりません。これを怠ると部下は“良かれと思って”不要な情報を上げてきたり、本来必要な情報を上げなかったりしてしまいます。
2.「事実」での「報・連・相」がなされているか
2つ目のポイントは、「事実」ベースで「報・連・相」できているかです。具体的には、数字やその他根拠に基づいたコミュニケーションになっているか、初めてトライすることであれば、何らかの仮説を立てての会話になっているか、です。
前述のように、上司側は部下からの情報を基に意思決定をしなければなりません。しかし、肝心の情報が部下の主観・感情・ただの個人的見解であったとすると、意思決定の材料にはなりえません。ネガティブな情報も含めて「事実」を上げてくることを求めなくてはなりません。もちろん、ネガティブな情報も上げることができる環境を整えておく必要があります(いわゆる、心理的安全性の高い組織環境)。
3.部下に考えさせているか
最後に、部下に考えることを求めてください。よくあるのが、「どうしたらいいですか?」という相談です。このような相談に対して懇切丁寧に説明し、答えを教える上司がよくいますが、これはNGです。これが常態化すると、部下は「困ったら上司に聞けばいい。上司が何とかしてくれる。」という思考になり、自分で考えることを放棄します。こうなると、その組織は上司の頭脳・アイディア以上には絶対に成長しません。
そうではなく、部下にも知恵を出させるようにするのです。具体的には、「〇〇という状態なのですが(事実ベース)、AとBのどちらの案がよいでしょうか?」「△△という事実があるので□□をやってもよいでしょうか?」など、上司がまずは一言で回答できる形での相談をするように部下に求めましょう。もちろん、上司側の判断で却下してもかまいません。
全てにおいて部下より詳しい必要はない
部下とのコミュニケーションにおいて大切なことは、「報・連・相」のほかにもあります。それは、全てにおいて上司が部下より優れている・詳しい必要はないということです。会社組織はチーム戦です。スポーツの世界においても監督・選手にそれぞれ役割があり、選手の中でも求められる機能が異なります。
会社ではつい「上司だから部下より全てが優れていないといけない」と考える方がいますが、それは間違いです。上司=チーム監督、部下=選手と考えてみてください。監督がチームで一番優れた選手である必要はありませんよね。監督は自分より優秀な選手をいかに上手に使って、試合に勝利するかが求められます。これは会社組織でも同じです。
また、自分がチームを率いる上で知っておかなければならないことや、必要な情報は詳しい部下に遠慮なく聞いたらよいのです。ただし、あまり下手に出ると特定の分野において「私の方が上司より上」という錯覚が部下に発生し、上司部下の位置関係が崩れる場合があるので注意しましょう。これを防ぐためには、最初の段階で、上司=監督、部下=選手の位置関係であることを明確にしておく必要があります。
部下を成長させるコミュニケーション
ここまででようやく、部下と適切なコミュニケーションを取る下地ができました。いよいよ、絶好のパスをきっちりとゴールに入れるフェーズです。つまり、部下からの報告に対して適切なフィードバックを行い、部下を成長させていくのです。
人の成長は自身の不足(何がどのくらい出来ていないか)を認識するところからスタートします。具体的なプロセスを受験勉強を例にお伝えします。
プロセス1:目標を明確にする(いつまでに、何をするか) 例:入学したい学校を決める
プロセス2:目標に向かって行動し、結果を分析する 例:模擬試験を受けて結果を分析する
プロセス3:不足を明確にする 例:模擬試験の結果からどこが自分の弱点か明確にする
プロセス4:不足を埋めるための工夫をする 例:数学が悪かった → 数学を集中的に勉強する
上記を繰り返すことで徐々に不足が埋まり、立てた目標に近づくことができます。いわゆるPDCAサイクルを回すということですが、1つ注意点があります。
それは、「プロセス4」については必ず部下に言わせるということです。つまり、不足をどう埋めていくか、部下に知恵を出させるということです。ここを上司が全て教えてしまうと、結局は“考えない部下”に育ってしまいます。どうしても知恵が出てこない場合に、少しヒントを与えるのはかまいません。
また、不足を埋めるための工夫と、それを実行して何を達成するかをセットで報告させることも必要です。「プロセス4」で「頑張ります」「努力します」という回答が部下から出てきたとき、その部下は本当に成長するでしょうか? おそらくNOですよね。必ず具体的な「約束」を上司部下で結びましょう。
まとめ
本記事では、部下とのコミュニケーションを正しく成り立たせる方法と、そのコミュニケーションを活かして部下を成長させる方法を解説しました。
1.部下の役割と報告してほしい内容を明確にして、上司と部下が同じゲームをやるようにする。
2.主観や感情的なものではなく、「事実」でのコミュニケーションを行う。
3.部下に「考える」ことを求める。
4.部下の報告をベースとしてPDCAサイクルを回し、部下が成長するコミュニケーションを実行する。
これらを実施していけば、部下とのコミュニケーションにおけるストレスが最少化され、部下の成長速度も劇的に向上するはずです。
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