写真・文/石津祐介

江戸時代は東海道の16番目の宿場町、由比宿として栄えた静岡県の由比。海岸沿いの断崖は東海道の難所として知られ、同じく難所として知られる新潟県の親不知になぞらえて「東海道の親不知」とも呼ばれていた。

現在でも、国道1号線と東名高速道路が通る交通の要所でもある。

東海道の16番目の宿場町として栄えた、由比宿。

壮大な富士の眺望が広がる薩埵峠

東海道五十三次の由比宿と興津宿の間にある薩埵峠(さったとうげ)は、海沿いを通るコースが波にさらわれるような難所だったため、山側の迂回ルートとして作られたコース。難所を避けてるとはいえ、峠へ至る道は急な山道が続き苦労するには変わらない。

この薩埵峠は富士山のビュースポットとして有名で、歌川広重の浮世絵シリーズ「東海道五十三次」にも描かれており、同じ構図で富士の眺望が楽しめる。

薩埵峠から見る富士山。浮世絵と変わらない構図で富士山を望める。

東海道五拾三次之内 由井・薩埵嶺(静岡市東海道広重美術館蔵)

きっと東海道を行き来する旅人も、苦労して峠を越えた先に広がるこの壮大な風景に感動したのであろう。

この峠は古戦場としても知られており、南北朝時代には足利尊氏と足利直義、戦国時代は武田信玄と今川氏真、北条氏政との間で合戦があり、それぞれ「薩埵峠の戦い」と呼ばれている。

【薩埵峠】
峠へはJR興津駅から徒歩80分のハイキングコース
車でのアクセスは、静岡市のHPにてご確認を
http://www.city.shizuoka.jp/000_001369.html

由比の宿場町

由比は鎌倉時代から続く宿場町で、由比宿には大名が宿泊する本陣1軒、脇本陣1軒、そして旅籠屋は32軒あり、小さい宿場町ながら賑わいを見せていたようだ。

本陣跡には「由比本陣公園」が整備されており、敷地内には明治天皇がご小休された離れ座敷を復元した御幸亭や由比宿交流館などが整備されている。

本陣公園の近くは、江戸幕府転覆を企てた「慶安の変」の首謀者として知られる軍学者、由比正雪の生家「正雪紺屋」もあり、染物の道具などを見学することができる。

由比宿の本陣跡に建てられた「由比本陣公園」

【由比本陣公園】
静岡市清水区由比297-1
東海道由比宿交流館
TEL:054-375-5166
営業時間9:00〜17:00
休館日:毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は翌平日)および年末年始
JR由比駅より徒歩25分
http://yuihonjin.sakura.ne.jp/index.html

江戸時代の軍学者、由比正雪の生家「正雪紺屋」


東海道名主の館・小池邸

「東海道名主の館」と呼ばれる小池邸は、由比地区で長年名主をつとめた小池家の母屋だ。名主は代々、小池文右衛門を襲名し、年貢の取立てや戸籍管理など村の政全般を担っていた。

建物は明治期に建てられたものだが、低い軒の瓦葺き、正面の潜り戸付きの大戸や格子、外回りの石垣やなまこ壁は江戸の面影が残っており、当時の雰囲気が伝わってくる。 1998年に国の登録有形文化財、2011年に市の「地域景観資源」に指定されている 。

由比地区の名主の母屋、江戸の面影が残る小池邸。

六畳の整形四間の部屋、大黒柱の建つ伝統的な造り。

【東海道名主の館 小池邸】
静岡市清水区由比寺尾464-9
TEL:054-376-0611
営業時間3月~10月:9:30〜16:30
11月~翌年2月:9:30〜16:00
休館日:毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は翌平日)および年末年始
JR由比駅より徒歩10分
http://www.city.shizuoka.jp/000_002458.html

由比名物桜えび

宿場町として知られた由比だが、それ以上に有名なのが桜えびだ。全国でも駿河湾でしか水揚げされず、由比漁港では最大の水揚げを誇っている。桜えび漁の期間は、春は3月中旬~6月初旬、秋は10月下旬~12月下旬の2回で、それ以外の時期は桜えび保護のために休漁となっている。

由比漁港の脇にある「浜のかきあげや」は、新鮮な桜えびが手軽に味わえるとあってシーズン中は大いに賑わう。平日でも開店前から行列ができ、土日のお昼時となれば1〜2時間は待つことになる。

由比の町には桜えびを提供する店が多くあり、駅前の通りは「由比桜えび通り」と名付けられている。

由比漁協の脇にある「浜のかきあげや」。新鮮な桜えびが味わえる。

人気の「漁師の沖漬丼セット」は数量限定メニューで1,000円也。

【浜のかきあげや】
静岡市清水区由比今宿字浜1127
TEL:054-376-0001
営業時間10:00~15:00
定休日:月曜日(サクラエビ漁期以外は金土日曜日のみ営業)
JR由比駅より徒歩15分
東名清水ICより車で30分

かつて由比の浜には水揚げした桜えびが天日干しされ、浜が桜色に染まり風物詩となっていたが、国道のバイパスや高速道路が作られその風景は見れなくなった。

現在では、富士川の河川敷に天日干しの場所を変え、晴れた日には富士山をバックに桜えびの絨毯を見ることができる。

富士山をバックに桜えびの絨毯が広がる。

これから、桜えび漁も最盛期を迎える。かつての東海道の宿場町を散策し、桜えびに舌鼓を打ってみてはいかがだろうか。

【由比へのアクセス】
<鉄道>
東海道新幹線静岡駅下車、東海道本線乗換えで約20分
新幹線新富士駅下車、バスかタクシーで東海道本線富士駅から乗換えで約13分

<自動車>
大阪、名古屋方面から東名高速道路、清水ICを沼津、富士方面へ
東京、横浜方面から東名高速道路、富士ICを静岡、清水方面へ


写真・文/石津祐介
ライター兼カメラマン。埼玉県飯能市で田舎暮らし中。航空機、野鳥、アウトドア、温泉などを中心に撮影、取材、執筆を行う。

 

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