日本はもとより世界中の芸術家に影響を与えたと言われる浮世絵。江戸時代の人々の暮らしに彩りを与え、最新情報を届ける、まさに現代メディアのさきがけでした。現在でも多くの人々を魅了する浮世絵ですが、絵に込められた意味や作者の意図、歴史的背景などを知ることで、より深く楽しむことができます。
國學院大學文学部教授・国際浮世絵学会常任理事の藤澤紫さんが監修した『楽しく脳活 クイズで学ぶ浮世絵入門』(小学館)は、クイズ形式で学ぶ、浮世絵の入門書。問題を解いていくだけで、江戸の暮らしや遊び心もわかり、浮世絵鑑賞が100倍楽しくなります。
そこで今回は、『楽しく脳活 クイズで学ぶ浮世絵入門』から旅のガイドブックとして人気を博した名所絵と、最も知られている浮世絵作者の一人、葛飾北斎に関するクイズをご紹介。北斎の描く大胆な構図は、世界中に衝撃を与えました。
監修/藤澤紫
いつか訪れたい旅のガイドブック【名所絵】

メトロポリタン美術館蔵
名所絵は、浮世絵版画の世界ではやや遅れて花開いたジャンルです。浮世絵における風景表現は、菱川師宣の時代の版本などにも見出すことができますが、風俗画や物語絵の背景として補助的に描かれたものでした。
名所絵が大きく発展したのは、「浮絵(うきえ)」の登場がきっかけです。西洋の銅版画などに見られる遠近法を導入した絵画表現によって、それまで平坦だった絵に奥行きが生まれ、野外の描写に応用されるようになりました。
名所絵を確固たる地位に押し上げたのは、葛飾北斎(かつしかほくさい)です。銅版画の洋風表現を木版で表す創作をいくつか試みた上で、満を持して天保初年(1830)頃に刊行した「冨嶽三十六景(ふがくさんじゅうろっけい)」は拍手喝采を浴び、あとを追うように歌川広重が「東海道五拾三次之内(とうかいどうごじゅうさんつぎのうち)」を、歌川国芳が「東都名所」を次々と刊行し、名所絵は美人画や役者絵と並ぶ存在になりました。
問1 何の名所シリーズ?

東京国立博物館蔵 出典:ColBase

天保4年(1833) 東京国立博物館蔵 出典:ColBase
上の2作品は、「冨嶽三十六景」刊行後に北斎が描いた2種類の名所絵シリーズの作品で、それぞれ特定のテー
マに沿って描かれています。それは何でしょう?
第一線を走り続け画業一筋70年!【葛飾北斎】
葛飾北斎は、19歳で勝川春章に弟子入りし、その1年後、「春朗(しゅんろう)」の名でデビュー。以来、数え90歳で他界するまで、画業一筋に生きた天才絵師です。
70年に及ぶ活動期間中は、浮世絵だけに留まらず、狩野派や琳派、中国風の花鳥画に西洋絵画と、興味を抱いた絵に次々と挑戦したため、画風は常に変化しました。版本の挿絵や役者絵からスタートして、勝川派から離れた30代半ばからは主に私製版画の摺物や美人画、40代では読本挿絵、50〜60代では絵手本、70代で傑作「冨嶽三十六景」などを手がけ、70代後半からは肉筆画に専念していきました。
「北斎」という名は40代で使用した画号で、晩年の「画狂老人卍(がきょうろうじんまんじ)」まで改号は約
30回。転居は90回以上と、その逸話からは老いてもあふれ出る北斎のエネルギーがうかがえます。
問2 「冨嶽三十六景」にも使われた「ベロ藍」の発祥地は?

東京国立博物館蔵 出典:ColBase
北斎も好んで使った「ベロ藍」ですが、発祥地の名前をとって、そのように呼ばれるようになりました。さて、発見されたのはどこでしょう。次の中から選んでください。
1.ベニス
2.ベルギー
3.ベルリン
【問題の答えと解説は次のページに続きます】










