
30~40代半ばのプレ更年期や、40代後半~50代の更年期の女性は「なんとなくの不調」「ちょっとした違和感」を抱くことが多くなります。なかでも多くの人が困っている悩みはおなかの出っ張りの症状です。
実は、その不調には漢方薬が役立つことをご存知でしたか?
私の悩みにも漢方薬が役立つのか知りたい! 根本解消する方法が知りたい!
そんな女性たちの疑問を、漢方の専門家に解説してもらいます。
今回は「おなかの出っ張り」の原因や対処法について、あんしん漢方の薬剤師で、漢方薬製剤の開発研究に携わる碇 純子さんに教えてもらいました。
Q.50代になってからぽっこりと膨らんだおなかが気になる……

雅子さん、55歳からご質問をいただきました。
「50歳を過ぎた頃から、おなかの出っ張りが気になるようになりました。太りやすくなったのはもちろんですが、おなかだけが異様にぽっこりとしているんです。
先日、お風呂上がりに全身鏡で自分の体を見たとき、「妊婦さんみたいだな……」と思ってしまいました。
主人は、『モデルじゃないんだから、年齢相応の体型でいいんじゃない?』と慰めてくれるのですが、周りの同世代の女性たちは皆スリムで、それが余計にコンプレックスになっています。
このぽっこりおなか、何か大きな病気の前触れではないかと心配です。大丈夫でしょうか?」
ご質問ありがとうございます。ぽっこりと膨らんだおなかは目立ちやすく、見た目に関するコンプレックスにもつながりやすいですよね。
50代以降のおなかの膨らみは、様々な原因が考えられますが、適切な治療やセルフケアを行うことで、症状の緩和をめざすことができます。まずは、おなかの出っ張りの原因をしっかり把握して対処しましょう。
おなかぽっこりの原因

まずは、おなかがぽっこりと出てしまう主な3つの原因について見ていきましょう。
体脂肪の増加
加齢とともに太りやすくなる要因のひとつが、基礎代謝の低下による体脂肪の増加です。基礎代謝とは、生命活動を維持するために必要な最低限のエネルギーのこと。
加齢により基礎代謝が低下すると、1日の消費カロリーが減少し、その分余ったエネルギーが脂肪として蓄積されやすくなります。
若い頃と同じ食事をしていても、基礎代謝量が減った分、カロリーオーバーになりやすいのです。
腹筋の衰え
加齢や運動不足により筋肉が衰えることも、おなかが出てしまう原因になります。
とくに、腹横筋などのインナーマッスル(体の深部にある筋肉)が衰えると、内臓の位置が本来あるべき場所よりも下がり、おなかがだらしなくぽっこりと出っ張る原因に。
また、筋肉自体が減少し、基礎代謝が低下することで、体脂肪が増える悪循環にもつながります。
更年期のホルモンバランス
閉経前後の約10年間にあたる更年期では、女性ホルモンのエストロゲンの低下により、様々な不調があらわれます。
エストロゲンには女性らしい体を作る働きをはじめ、健康を維持するための働きがあります。そのひとつが、筋肉量を維持する働きです。
エストロゲンは、血液中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を抑える働きを持っていますが、エストロゲンが低下することで、LDLコレステロールが増えやすくなり、内臓脂肪を中心に、脂肪がつきやすくなります。
背景に病気が隠れているケースも

おなかの出っ張りの背景には、病気が原因として隠れている場合があります。
たとえば、「腸閉塞」という病気では、腸の中で食べ物や水分、消化液が詰まり、おなかの張りのほか、便秘、激しい腹痛などの症状があらわれます。
また、「腹壁ヘルニア」と呼ばれる状態では、腹部の臓器が腹壁から飛び出し、おなかが膨らむ原因に。
もし異常を感じる場合は、なるべく早いうちに消化器内科などを受診しましょう。
おなかぽっこりを改善するセルフケア

ここからは、おなかの出っ張りを改善するセルフケアを3つご紹介します。
有酸素運動で代謝量を上げる
有酸素運動とは、ウォーキング、ジョギング、水泳といった、長時間継続して行う運動のことです。有酸素運動は、全身の血行を促進し、筋力を鍛えることで、効率的に代謝量をアップすることができます。
激しすぎない運動なので、普段運動習慣がない方でも気軽に始めやすいのもメリットです。週1回の運動よりは、短時間でもいいので週に何日も運動することを目標に、体を動かしましょう。
タンパク質を摂る
タンパク質は、筋肉の材料となる栄養素です。タンパク質は20種類のアミノ酸から構成されており、そのうちの9種類の「必須アミノ酸」は体内で合成できないため、食事から摂取する必要があります。
必須アミノ酸が多く含まれる肉、魚、乳製品、卵を始め、大豆製品などをバランスよく、積極的に食卓にとり入れましょう。
漢方薬を試す
「ぽっこりおなかを根本から改善したい」
「いろいろと試したが症状が改善しない」
「西洋薬は一度飲み始めたら、やめられないのではないかと不安」
そんな方には、医薬品として効果が認められている漢方薬がおすすめです。
漢方薬は自然にある植物や鉱物などの「生薬」を組み合わせて作られているため、 一般的に西洋薬よりも副作用が少ないといわれています。
また漢方薬が目指すのは苦痛を和らげるための対症療法ではなく、根本的な解決です。体質の改善に働きかけることのできる漢方薬は、「同じ症状を繰り返したくない」という思いに応えてくれます。
「バランスの取れた食事や運動などを毎日続けるのは苦手」という方も、症状や体質に合った漢方薬を毎日飲むだけなので、手間なく気軽に継続できます。
50代からのおなかの出っ張りには、「脂肪の吸収を抑え、燃焼をサポートする」「余分な脂肪を便と一緒に排出する」「血流をよくして、代謝を高める」「自律神経を整えて、ストレス過食に対処する」といった生薬を含む漢方薬を選びましょう。
おなかの出っ張り対策におすすめの漢方薬
・防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん):血流や水分代謝を促し、脂肪燃焼の働きを高め、不要物を排出します。
・大柴胡湯(だいさいことう):体の余分な熱をとり除き、脂質代謝を改善して、ストレス太りを改善します。
ただし、漢方薬を選ぶ際にはご自身の体質に合ったものを選ぶことが大切です。体質に合っていない場合は、効果が出ないだけでなく、副作用が起こることがあります。
購入時には、できる限り漢方に精通した医師や薬剤師等にご相談ください。
「お手頃価格で不調を改善したい」という方には、医薬品の漢方薬がおすすめ。スマホで気軽に相談できる「あんしん漢方」のような新しいサービスも登場しています。
AI(人工知能)を活用した「オンライン個別相談」サービスでは、漢方のプロが体質に合った漢方を見極めてくれます。お手頃価格で自宅まで郵送してくれるため、手軽で便利です。
おなかの出っ張りは生活習慣を改善して対処しよう

ぽっこりと膨らんだおなかの出っ張りの原因は、加齢による代謝の低下や、腹筋の衰え、女性ホルモンのエストロゲンの減少によるLDLコレステロールの増加などが考えられます。
有酸素運動を行って代謝量を上げたり、タンパク質を積極的に摂取したりすることで脂肪燃焼を促し、対処していきましょう。
ただし、背景に大きな病気が隠れている場合もあるので、異常を感じた場合は、早めに病院を受診することが大切です。
<この記事の監修者>

碇 純子(いかり すみこ)
薬剤師・漢方薬生薬認定薬剤師
/ 修士(薬学) / 博士(理学)
神戸薬科大学大学院薬学研究科、大阪大学大学院生命機能研究科を修了し、漢方薬の作用機序を科学的に解明するため、大阪大学で博士研究員として従事。現在は細胞生物学と漢方薬の知識と経験を活かして、漢方薬製剤の研究開発を行う。
世界中の人々に漢方薬で健康になってもらいたいという想いからオンラインAI漢方「あんしん漢方」で情報発信を行っている。
●あんしん漢方(オンラインAI漢方):https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/?tag=221432a9sera0249&utm_source=sarai&utm_medium=referral&utm_campaign=250405
イラスト:にゃたり
