文/鈴木拓也

写真はイメージです。

つらい咳が長く続く「ぜんそく」。

近年、ぜんそくに罹っている人は増加傾向にあり、推定で1千万人はいるとされている。子ども特有の症状と思われがちだが、実際は大人のぜんそくもかなり多い。

症状は咳だけなので、軽く見てしまいがちだが、「絶対に放置してはいけない」「死ぬこともある」と言うのは、みやざきRCクリニックの宮崎雅樹院長だ。

実際の話、医療の進歩によって死亡者数は減っているが、それでも年間で約千人が命を落とす。宮崎院長は、「しっかり治療」することが大事だと、著書『そのせき、ぜんそくかもしれません』(自由国民社 https://www.jiyu.co.jp/shumiseikatsu/detail.php?eid=04360&series_id=s08)で訴えている。

似ているようで異なる、普通の咳とぜんそく

宮崎院長が本書で力説するのは、症状をコントロールすることの重要性だ。だが、その前に、なぜ咳が出るのかについても詳しく解説している。

通常の咳は、鼻から気管支にかけての気道のどこかに、ほこりやウイルスといった異物が入ってきたときに起こる。気道の迷走神経が、異物によって刺激を受け、咳を出して異物を排除するよう、脳が指令を出す仕組みになっている。

ぜんそくも、異物の刺激によって引き起こされる点では共通しているが、異なる点もある。この場合、気管支の平滑筋という筋肉が収縮し、この収縮を、迷走神経が刺激として感じることによって咳が生じる。

また、ぜんそくはダニやカビといったアレルゲンに反応するアトピー型ぜんそくと、アレルゲンに反応しない非アトピー型ぜんそくの2つに大別される。小児ではアトピー型が多く、成人になると非アトピー型の割合が増えてくる。

非アトピー型で、ぜんそくを発症させる原因として最も多いのがウイルス感染症。その他、気候の変化、過労、ストレス、肥満など、さまざまな原因があり、なかにはサプリメントが原因のこともあるという。

薬でコントロールするのが治療の基本

現在の医学では、ぜんそくは完治が難しい病気とされている。

しかし、症状が出ない状態を保つ、つまり「コントロールする」ことはできる。適切なコントロールによって、健常者と変わらない日常生活を送ることは可能だ。

そのために医療機関では、症状・体質に応じて薬剤が処方される。これには何種類かあるが、もっとも重要なのが、気道の炎症を抑える吸入ステロイド薬。使い始めから効果が出るまでに1~3週間ほどかかり、以降も毎日続ける必要がある。副作用はほとんどなく、高齢者も安心して使用できる。他に、長時間作用性抗コリン薬などあるが、毎日使用する必要がある点で共通しており、これらを長期管理薬と呼ぶ。

他方、発作時に使用し、すぐに効果が現れる発作治療薬と呼ばれるものもある。短時間作用性抗コリン薬などが、それにあたる。長期管理薬で症状の安定化を図りつつ、急な発作の際は、こうした薬を併用することが治療の基本となる。

ところで、症状が治まったように見えたからといって、自己判断で薬をやめてしまうのは禁物。受動喫煙や花粉の飛散などをきっかけに、元の状態に逆戻りしてしまうことは多い。宮崎院長は、薬の使用はしっかり続けるよう諌めている。

気道に悪い刺激は避けるのも大事

宮崎院長は、生活習慣を整えることで、ぜんそくをコントロールすることも重要だと説く。

例えば、「水分を十分にとることでのどを潤す」。これによって、気道の上皮にある線毛の水分量が保たれ、ウイルスなどの異物の侵入を防ぐことが期待できる。

また、気道に良くない刺激は避けるようにする。ここで言う刺激とは、タバコの煙(受動喫煙も含む)、線香、強い香水などを指す。くわえて、トウガラシやミントも咳を誘発することがあり、咳が多いときは摂らないのが賢明だ。

このほか、十分な睡眠をとって免疫力を高め、ストレスをためない生活を心がけて自律神経のバランスを保つなど、さまざまなアドバイスがなされている。人によっては、習慣化が難しいものもあるかもしれないが、できることからやってみると良いだろう。

くわえて、呼吸機能を鍛える「呼吸リハ」(肺トレ)も、いくつか紹介されている。もともと、医療機関で行われている呼吸のリハビリテーションをベースにしたもので、その1つに「口すぼめ体操」がある。やり方は以下のとおり。

1. 鼻から息を肺がいっぱいになるまで吸う。
2. 軽く口をすぼめて、ゆっくり息を吐く。最初のうちは10回くらいを目安に行う。やり方を習得したら、呼吸が乱れたときなどに行うとよい。

ポイントは、ろうそくの火をゆらすようなイメージでゆっくりと。火が消えるほど強く吐かないようにする。

* * *

このように本書は、咳が続いて「おかしい」と思っている方向けの知識が網羅された、格好の1冊。医療機関を受診するとともに、本書を読んで参考にすることをおすすめしたい。

【今日の健康に良い1冊】
『そのせき、ぜんそくかもしれません』

宮崎雅樹著
定価1595円
自由国民社

文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライターとなる。趣味は神社仏閣・秘境めぐりで、撮った写真をInstagram(https://www.instagram.com/happysuzuki/)に掲載している。

 

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